当館では2010年3月に、整理を続けてきた米沢嘉博氏旧蔵同人誌約3000冊を公開した。6月4日(金)には企画展示コーナー「同人誌の小宇宙 ─米沢コレクションを中心に─」をスタート、同展後半を飾る関連イベントとして、8月29日(日)に標題のトークイベント「創作系同人誌の半世紀」を行った。
同人誌界で現役最古参のサークルである「作画グループ」の代表・ばばよしあき氏、初期からの同グループメンバーである漫画家・みなもと太郎氏をお招きした。作画グループ(正式名称:日本統一ストーリィ作品研究会作画グループ)は、ばば氏がつくった漫画同好会を前身として1962年に結成された会員制の同人グループである。プロ・アマ問わず漫画好きであれば誰でも入会可能。会員向け作品集の「なかま」、一部書店でも入手可能な「GROUP」(SG企画発行)などを編集・発行してきた。
トークは館蔵資料、両氏の持参した資料をプロジェクタで映し出しながら行われた。ばば・みなもと両氏は「プロ・アマが同じ土俵に立って切磋琢磨できる状況」があったこと、「肉筆同人誌」(作家が描いた生原稿を綴じたもの。作画グループでは原稿サイズを揃え、巻末にコメントスペースを設けるなどして製本し、回覧していた)も80年代まで続けていたが、これは他作家の原稿を見るというまたとない勉強の機会であり、描く力を伸ばすのに役立ったであろうことの重要性を語った。
60年代、漫画関係サークルをネットワーク化しようという「COM」(虫プロ商事)の意向で、ばば氏は「ぐらこん関西支部」を立ち上げている。70年代にはメジャー誌へも活躍の場を広げ、作画グループは同人による大合作『アキラ・ミオ大漂流』(週刊少年マガジン)、『銀河を継ぐ者』(週刊少女フレンド)などを発表。このような画期的な成果には、「漫画家に号令をかけると集合する」ようなグループの在り方、つまりは、ばば氏がプロデュース能力に長けていたことにあると、みなもと氏は分析した。
「プロデュース」ということがいわれる前からプロデュースの手腕を発揮して広く漫画界を見ていたばば氏、『風雲児たち』『まんが学特講』などで見られるように「歴史」への鋭い視線を持続するみなもと氏のトークは縦横無尽、作画グループのこと以外にも多岐にわたり、質問も活発に出て、盛会のうちに幕を閉じた。
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