明治大学 平成17年度現代的教育ニーズ取組支援プログラム
広域連携支援プログラム-千代田区=首都圏ECM-
本プログラムは、文部科学省が公募する、平成17年度「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)に採択されました。」
現代GP採択関連講座
市区長・教育長リレー講座「子供と地域の街づくり」―街づくりにおける広域連携の枠組みつくリ―
[報告書]  PDFPDF版
開催日時:平成17 年10 月19 日(水) 参加人数:参加人数34人
講師:群馬県太田市長清水聖義 テーマ:国際的視野に立つ教育
外国語教育
 太田市は人口21万7千人を越え、工業製品出荷額は北関東で断トツの金額にすると、約1兆8千億円、お隣の大泉町と合わせると群馬県の40%を占める工業都市です。そして、ブラジル、ペルーなどの外国人労働者が沢山住んでいる町です。
 子供が一番の問題です。満足に教育を受けることがなく、字も読めない。そこで、少子化社会に彼らが日本の戦力になってくれればと私は思いました。彼らに教育をし、パートナーとなればこんなすごいことはないと思います。そこで、サタデースクールというのをやりました。そんな中、あるきっかけがありました。大阪大学の医学博士の中村先生が、外国人にどうやって教育したらよいかの研究をしていて、そのグループで修士の途中の根岸君というのが現実に子供たちと接したいといってくれたのです。これは大成功でした。野球を教えたり、勉強をしたりして彼はJICAでブラジルに行っていたことがあるので、バイリンガルで勉強を教えられた。彼がヒントになって太田でブラジルの子供たちにバイリンガルの教育をやることになりました。
 国に予算をつけてくれといってもだめだったので、特区申請をしました。ブラジルに担当を送って、当初は優秀な人材を探し合計6 人のバイリンガル教員を雇用しました。(ブラジル:2名、国内のブラジル人学校:2名、バイリンガル指導助手:2名)彼らは4,5 ヶ国語しゃべれます。このことがJAICAでも、評判になり、太田市に研修生を5名も送ってくれたのです。この研修生にも、子供たちに勉強を教えてもらっています。私の目標は彼らが全員高校に入学することです。
太田市が作った学校
 外国語以外の教育でも力を注いでいます。
今の時代、野球を知らない先生が野球を教える教育の嘘みたいなことをやっている。これはよくない。そこで、第1におおたスポーツ学校というのを作りました。専門の先生が本当の事を教える。今2千人くらいが通うクラブみたいなものです。そろそろ超一流の子供がでます。おおた芸術学校も作りました。
 子供たちはみんな塾に行かないと、いい高校や大学に行けないと親が思っていますが、これはまずいと思います。第2に算数支援隊というのを作りました。教育委員会に持ち込んでも相手にされなかったので、役所の会議室で秘書室が始めました。算数の成績表が3 以下の子供が対象でした。教員の免許を持っていなくても支援隊の先生になりたい若い人を募集して、テキスト作りや家庭訪問をしてもらい、マンツーマン方式で子どもたちに教えてもらいました。また、支援隊の先生の評価をしてもらうアンケート調査も織り込んで算数支援隊を推進していきました。これは、顕著に成果が現れました。さらに、今年度から算数と国語、数学と英語は20人以下で教える少人数教育をすることになりました。太田市では20 人学級の教育に143 人のサブ教員を配置し、約4 億円の予算を使っています。
 また、HPくらい作れるようになろうと第3にIT学校を作りました。
ぐんま国際アカデミー
  もう一つ、子供たちは英語を身につけていません。そこで、おおた英語学校をアメリカンスクールと同じようなシステムで作ろうとしたのですが、日本語でないと検定教科書にならないという問題と、教員免許状を外国人に渡していない2 つの問題がありました。これは特区を申請して両方を認めてもらい、今動き始めたばかりです。ぐんま国際アカデミーとして、6 ヶ月たちましたが、すばらしいです。先日、文化村オーチャードホールでベルギー王立歌劇場がドンジョバンニの公演をしました。ヨーロッパでは公演の前にパフォーマンスをやるそうなのですが、そこで、この学校の4 年生の子供たち32 名が出場しました。ベルギーから教える先生が2 人学校に来て、英語で説明し、イタリア語で歌わせました。これが見事にできたのです。やはり、成果、実りがあってこその教育ではと私は思います。
行革の断行!
 太田市は1市3 町で合併しました。その分、人員が余りました。余った人員を全員学校に出しています。問題のある学校9校に腕っ節の強い職員を9 人配置しました。市の職員ですから私が首にしなければいいので、思いっきりやってもらっています。また、先生の資格を持った職員も積極的に少人数教員として学校に派遣し塾に対応する学校にするわけです。これまでに100 億円の人件費を88 億まで減らしましたが、あと10 年間で400 名減らします。その予算をどんどん、教育に使っていく、それが私流の行革です。行革は涙の出ることではなく笑顔が出ることです。すごい仕事をする為にお金をケチるのです。その結果が太田市の教育を変えていく原動力となっているのです。
参加者との主な質問応答
Q: 地域の中のマイノリティーを戦力にしていこうという市長のお話ですが、障害者も含めてお考えを聞かせてください。
A: 知的障害者の場合、グループホーム、市営住宅の開放もありますけど、4万円のお給料を持ってもらうことにこだわっています。最初、街角に植える一年草の花の栽培をしてもらいました。その次に缶を分別して集め、製品化するこれはお金になりました。太田市の指定管理者制度みたいなシステムで「エコネットおおた」という50人雇用の工場を作りました。これには最初ドアトゥドアで送迎していました。しかし、働く場を作るから自分で通いなさいとし、一時は福祉の後退といわれましたが、今になってみると外の空気を吸いながら働く場に来ることはプラスだったと思っています。もう一つ、精神障害者の場合も、3人、5人のローテーションで調子のいい子が、農作業とか、缶の詰め替えなどやってもらい始めています。
Q: ぐんま国際アカデミーはスタートしてまだそんなに経っていませんが、それなりの成果をあげています。
沢山の地域以外の方がどんどんその学校に入ってこられていますが、市民の評価はどうでしょうか?
A: 地方都市が生き抜いていくためには市外からいろんな人が中に入り込んできてはじめて、全体のレベルが上がっていくと思います。やはり、新たな人たちが来ることはとてもよいことだと思っています。福井、柏、相模原から来られた方もみんな家を買われました。実は景気のよい時期ではないですが、環境省にかけあって、太陽光発電の分譲住宅を40ha、660戸作りました。太陽光発電をプレゼントするからと、売り出したらあっという間に売れてしまいました。オランダで400戸のマンションが世界最大だったのですが、この住宅は太陽光発電の集合住宅としては世界一です。この住宅の売れ行きもぐんま国際アカデミーが影響しています。
Q: 市長のリーダーシップには感銘を受けた次第で、行政の力をうまく使い、それと同時に地域の力も活用していることがわかるのですが、どのような形で地域の力を生かしているのでしょうか。
A: 市で特徴的なのは、図書館を全部市民にあげてしまったことです。当初、太田市役所の中に司書の資格を 持っている人は1,2人しかいませんでした。でも図書館は図書の好きな方、勉強されている方が経営されるのが一番理想的だと思いますので、今は40数名のNPO法人ライブラリーサポーターズというところの団体が運営をしています。先ほどいいましたように職員数を減らしましたが、その分、300人から400人の市民が役所に入ってきています。土日オープンしている役所の中には市民が7 割、職員が1,2 割です。事業部から何からみんなやってもらって、学童保育も365日体制。365日体制で働いて市役所のコストを下げています。市民会館などの会館類もぜんぶです。照明からマイクの調整まで全部そういうことが好きな人がやってくれています。


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