株式会社大林組 新タワー建設工事事務所副所長 生産設計担当 服部 道江

学生時代は自分の感性を大事にできる時期。
小さくまとまらず、夢を描いてください

東京スカイツリーの施工を一手に引き受ける大林組で、生産設計責任者として重責を担う服部道江さん。学生時代から感性を養い、男性社会の傾向が強い建築業界で切磋琢磨し、現在では東京の新たなラン ドマークを手掛ける。服部さんから次代を担う皆さんへのメッセージ。

生産設計という仕事

 現在、東京スカイツリーは609m(3月7日現在/完成時6むさし34m)。皆さん塔体(本体)が立ち上がってほぼ完成だと思われるでしょうが、いまが最も忙しいんです。私が携わる生産設計というのは、設計と施工の橋渡し役。設計事務所が作る設計図の意図を汲んで、施工に必要な要素の品質・工期・生産性を考慮 して「生産設計図」を組み上げます。完成図は描か れていて事前に大枠のスケジュールは組まれていますが、それを現実にするのは現場が始まってから。建築 は限られた時間の中での細事の積み重ねなんです。

夢を描いてこそ学生

 建築学科を志望したのは、何か手に職を付けたい と思ったからです。学生時代はそれなりに夢を見て、いろいろな建築家の本や建築雑誌を読み漁り、みん なで集まり夜な夜な、ときには徹夜で建築談議に熱くなっていましたね。黒川紀章先生がメタボリズム理論を発表したことに影響を受けたり、ミース・ファ ン・デル・ローエのガラスの空間に憧れたり。コンペでも設計図を引きながら、「ここは音だ」とか「ここは光だ」とか、いろんなことを考えました。そういった議論や文献を通して、自分なりの自由空間を想像していました(笑)。

 建築は、外観からではそのコンセプトや込められた思いがなかなかわかりません。関わった方と話してみて理解する事がたくさんあります。学生時代はなにもわかっていませんでしたが、現場に出て苦労だとか現実的な事がわかるようになりました。でも夢を描いてこそ学生だと思います。学生時代は、なにもしがらみがなく、自分の感性を大事にできる時期なんです。現実がわかりはじめると、小さくまとまってしまいますから。自由で良いんです。

私たちは、どんなものでも実現できます

 知識だけでは成り立たないのが、建築の世界です。「住まう」「感じる」「空間を造る」いろいろな経験を経て感性を磨く必要があります。私は大林組 に入社後、海外に派遣していただいたり、現場の施工を担当してさまざまな経験を積ませていただきま した。五感六感を研ぎすませて、いろいろなものを見たり、体験を通して感性を養ってください。私たちは、どんなものでも実現できますから(笑)。

Corporate profile
株式会社大林組
1892年の創業以来、建設工事や都市開発等を中心に事業を行い、国内外に数多くの実績を有する総合建設会社。 歴史と伝統の中で培った最先端の技術で、社会に安全と安心を提供している。代表作に六本木ヒルズ森タワー、関西国際空港、京都タワー、神戸ポートタワーなど。
〒108-0075 東京都港区港南2-15-2 TEL 03-5769-1111(代表)
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History of Michie Hattori

1981年大林組入社。生産設計を経て、海外派遣や施工担当として従事するなど多岐にわたり活躍。これまで東京武道館や池袋駅ビルの建設を手掛ける。2008年6月より東京スカ イツリー建設工事事務所副所長として生産設計責任者に抜擢され、現場の指揮を執る。1957年生まれ。東京都出身。
明治大学広報
雑誌 明治
meijin Vol.1

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