中村拓志&NAP建築設計事務所代表取締役・一級建築士 中村拓志

社会に出てもぶれないために
学生時代に自分の理想像を確立して

新進気鋭の若手建築家として脚光を浴びる中村拓志さん。華やかに見える建築の世界は、実は様々な制限や条件という限られた範囲内で最高の建築を作り上げないといけない厳しい世界。そんな社会で活躍する中村さんを支えるのは、学生時代に仲間とともに議論し、そこで自身の本質を知ったことにある。

チャンスをものにする思い込む力

大学院を修了して、隈研吾さんの事務所で働く時、僕は最初から3年で辞めると思い込んでいました。普通、スタート時点としては3年で独立するなんて無謀な思い込み。でも、実現していく過程で徐々に現実味を帯びてくる。思い込むということはどんな人間になりたいのか、どんな仕事をしたいのか目的意識を持つこと。だから必然と集中できるんです。

早く独立をしたかったのは、自分の名で建築を作りたいという思いから。すべてが自分の責任になる状況での判断と、スタッフの一人としての判断では、決断の重みが全然違う。そういう緊張感ある現場でものを作らないと本物ではないという思いがありました。独立のチャンスを掴むためには、もちろん先生の元でしっかり修行させていただいたし、学生時代に取り組んだことも大いに役立っています。

大学は自分次第で全てが決まる

大学時代は本当にチャラチャラした奴(笑)。でも建築は好きで、仲間を集めて建築の研究会を主宰していました。これは建築について意見を述べ合う自主的な会です。大学は高校とは違って自分次第の部分が多い。受け身になったら意味がない。自分にとって何が正しいかを探さないと。建築であれば、建築とは何か、建築には何ができるかなど、徹底的に議論を交わす。研究会はそんな僕らの議論の場となり、自分の本質を見つける足がかりとなりました。

社会に出ると、社会人なりにしがらみがあり、妥協をせざるを得ない場面に出くわすものです。建築の場合でもそう。経済効率が優先されたり、建築条件やクライアントの趣味など、様々な条件の中での判断が必要になります。そんな時、学生時代に自分自身の理想像を作っておくと、社会に出てもぶれることはないし、妥協を迫られても間違った方向にいくことはないと思うんです。大学時代は時間がたっぷりある。だから、仲間と切磋琢磨して、自分の理想像を確立する時期なんじゃないでしょうか。

明治大学のアイデンティティー

明治大学の良さは、バンカラで泥臭いところがあることだと思うんです。学生も通ううちにそういう色に染まっていく。こういう校風は腹を割って話せる仲間ができやすい。仲間を作って彼らと意見交換して自分を確立していく。ある種の社会に対する、スタートラインになると思います。こういう経験って、社会に出てからはなかなかできないよね。


Profile of Hiroshi Nakamura

理工学研究科博士前期課程修了後、隈研吾建築都市設計事務所に入所。2002年、NAP建築設計事務所を設立する。若手建築家の第一人者として注目され、日本建築家協会賞2008やTHE 30th INAX DESIGN CONTEST 金賞、2008年度グッドデザイン金賞、JCD 賞2006大賞など受賞歴多数。1974年生まれ。東京都出身。

Corporate profile
中村拓志&NAP建築設計事務所
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明治大学広報
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