女優 柴田 理恵

何もかも棄ててのゼロからスタート。
それでもやれることはやらないと

憧れていた佐藤B作さんの劇団で舞台役者になるも、若くして劇団を飛び出し、仲間とともに自分たちの劇団ワハハ本舗を旗揚げした柴田理恵さん。恵まれた環境を棄て、あえて選んだゼロからの出発。「強く生きたい」と選んだ道の先には、現在、看板女優として舞台で大爆笑を誘う笑顔の柴田さんの姿がある。

何かを犠牲にしてでもやりたいこと

 大学の仲間たちが進路で迷い始める頃、劇研(演劇研究部)の先輩に言われたのが「数年先の自分の姿を想像してみるといいよ」ってこと。その頃は芝居の道へ進むということは、一生、アルバイト暮らしを覚悟しなければいけないような時代。今みたいに映画やテレビの出演なんて考えられなかったし、たくさんのことを諦めなければ生きていけなかったんです。貧乏でも芝居を続けるか、まともな職に就いて普通の暮らしをするか?。自がどっちに比重を置いて生きる人間かを考えてみましたが、やっぱり一生芝居で生きようという考えは変わらなかった。自分がスーツを着てOLになっている姿なんて想像もできかったですね。

尊敬する人を越えるため

 芝居を続けたくて入団したのが劇団東京ヴォードヴィルショーです。当時から人気の劇団で、その溢れ出すエネルギーはもの凄かった。主宰者の佐藤B作さんもとにかく面白くてパワフル。芝居には厳しかったけど、常に愛情を持って接して下さいました。

 B作さんは10年前に自ら劇団を立ち上げて、苦労してここまで来られた方。最初はわずかなチケットを売るのにも苦心して、自分の生活もままならなかったことを経験されている。ゼロから始める苦労を知っているから、いき方そのものがやっぱり強いんですよね。バイトだけでも大変な私たち若手の貧しい暮らしを気遣って、「こいつらの生活だけは何とかしたい」と、あえてチケット販売のノルマを課さないでくれたり。本当に有り難った。でも、ある時、気付くんです。B作さんのような強さがなかったら、自分たちは一生、B作さんを越えられないって。そういう思いが凄く強くありました。また、10年経って次の段階に進もうとする劇団幹部と、もっとお笑いをやりたかった私たちとの考え方の相違もあって、同期の仲間とともにお笑いの劇団を作ることを決めました。

 何もかも棄ててのゼロからのスタート。先のことがどうなるかさっぱり分からないので不安もありました。でも、この道に進んだ以上、やりたい方向性が決まっているなら、やれることはやらないと。そんな思いで誕生したのがワハハ本舗だったんです。

“叱るおばちゃん”からのアドバイス

 現在、ワハハ本舗での私の役割は「叱るおばちゃん」(笑)。私が若い頃は先輩の話す内容は絶対に知らないと恥ずかしいと思ったから、陰でこっそりと勉強をしたものです。今の若い子たちは自分たちの世代のことだけ。知ろうとする意欲は少ないですね。お洒落とか身の回りのこともいいけど、もっとアンテナを広げた方がいい。若い時はいろいろなことに敏感だし、もっと大きなことに目を向けてほしいです。

Corporate profile
ワハハ本舗
エネルギッシュでパワフル、とにかくハッピーな舞台でファンを魅了するお笑い劇団。個性溢れるメンバーが総出演する抱腹絶倒のステージ「ワハハ本舗全体公演」は、今年は「ワハハの力」をテーマに「踊るショービジネス・新作版」と「大河歌謡ドラマ幕末伝」の二本立てで開催し全国ツアーは大盛況。
ワハハ本舗新しいウィンドウが開きます

Profile of Rie Shibata

劇団東京ヴォードヴィルショーを経て、1984年、演出家の喰始氏を中心に、佐藤正宏氏や久本雅美氏ら若手団員とともにワハハ本舗を設立。劇団の中心メンバーとして楽しくハッピーな舞台公演を精力的に行う。現在は舞台の他、映画やTVドラマ、バラエティ番組などでも活躍。1959年生まれ。富山県出身。

明治大学広報
雑誌 明治
meijin Vol.1

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