明治大学 平成17年度現代的教育ニーズ取組支援プログラム広域連携支援プログラム-千代田区=首都圏ECM-本プログラムは、文部科学省が公募する、平成17年度「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)に採択されました。」
Proj.7 浦安市明海南小学校にて経済教育が行なわれました!(水野ゼミ)

プロジェクト7は「学生による金銭教育の実践」です。水野ゼミは、今年も浦安市明海南小学校で金銭教育を行ないました。
今年の水野ゼミの金銭教育は「経済教育」。「貿易ゲーム」と「フェア・トレード」の解説を通じて、先進国と発展途上国の不公平と格差について教えることをテーマとしました。
小学生は、大学生が用意した貿易ゲームでは楽しく遊びながら貿易を模擬的に体験し、寸劇では不公平な貿易を見て、フェア・トレードの解説では先進国と発展途上国の公平な貿易の仕組みを学びました。
小学生は、先生方より年齢の近い大学生が教壇に立ったことで、親しみを感じながら、興味しんしんで授業を受けていました。
また、「児童労働」や「フェア・トレード」を教えるにあたって、学生たちはユニセフや、スターバックスコーヒージャパン本社にお話を伺いに行きました。
こうした努力が実り、大変完成度の高い経済教育を行なうことができました。

前半の授業は「貿易ゲーム」です!
■10月18日・19日 「貿易ゲーム」

前半の授業は1クラスづつ2時間を使って「貿易ゲーム」を行ないました。これは、貿易をゲームによって模擬的に体験するものです。貿易ゲームのルールは次のとおりです。
@各国に配られた道具・紙(資源)を使って「製品」を作る
 ○道具は、はさみ・定規・分度器・コンパス・鉛筆。
 ○ これらの道具を使って紙(資源)を切って「製品」を作る
 ○「製品」は各種の道具を使って、半円や円、長方形に紙を切ったもの
Aできあがった「製品」を世界銀行に持っていき、きちんとした形に出来上がっていれば、お金と交換してもらえる
 ○ゲームをリードする学生が世界銀行の係をする
Bできるだけ多くの「製品」を作って、他国より多くお金をかせぐのが目的
C他国と道具・紙(資源)を交換、または手持ちのお金で買うことは自由
D暴力による貿易は許されない
 ○ゲームをリードする学生を国連として、暴力を治める
小学生は6つの班(国)に分かれました。先進国(アメリカ・日本)、新興国(韓国・ブラジル)・発展途上国(コロンビア・エチオピア)の6カ国です。
じつは、この班分け(国)は、ゲームの最初に配られる道具と紙(資源)、お金に差があり、 先進国は各種の道具がそろっていてお金もあり、新興国や発展途上国から紙(資源)を得れば簡単にお金がかせげる仕組みになっていました。つまり、先進国ばかりが経済的に繁栄する仕組みです。
ゲームでは「紙と交換してください」「ダメ!」というやりとりや、紙を半分に切り、自国用と貿易用に分けるという上手な経済政策を行なっている国がありました。
ゲーム終盤は紙(資源)の需要が急速に高まって、道具での貿易はストップして値段は高騰し、まるで現在の国際情勢をあらわしているようでした。
授業の最後はゲームの感想の発表です。エチオピアを担当した班は「たくさん道具を持っている国には勝てない」と言っていて、小学生に現在の貿易の不公平さが身にしみて分かった様子でした。

先進国アメリカの班は、どのぐらい「製品」を作れたでしょう?
「製品」を世界銀行でお金に

■貿易ゲームの反省・感想
○コロンビア
・コロンビアは貧しく(道具が少なく)、アメリカや日本は道具が多いことに気づき、交渉がしにくくて、損をしないように考えて貿易しなければならなかった。
・お金や道具がないと貿易ができないけれど、道具がないとなにも生産できないので、ぜったいに貿易しなければならないことがあった。
・輸入や輸出が難しかった。でも、お金がなくても大切なのは人間関係だと思った。お金持ちの国のところに行くと、こころが冷たくて、貧しい国は優しかったから。
・最初は紙と鉛筆しかなかったけれど、知恵をしぼって貿易して、3位になることができて楽しかった。でも、アメリカは最初から道具がそろっていて強かった。
○エチオピア
・アメリカや日本は有利で、エチオピアは鉛筆と紙と100円しかなくて、貿易で動き出せたけれど、他の国は自分の国がもうかろうと必死だったから、なかなか貿易をしてくれないことがあった。
・同盟を組んだことがうまくいって、3位になることができて、うれしかった。
・最初に道具がなかったので、うまく交渉した。けれども、もっと違う道具、たとえば分度器などがあったら、もっとお金がかせげたと思う。
○ブラジル
・紙を日本に輸出していたけれど、日本はコンパスを持っていたので、どんどんお金をかせがれて、はまってしまったと思った。
・長方形だけでかせぐのは難しく、やっぱり先進国のほうがたくさんお金をかせげるんだ、ということが分かった。
・貿易の交渉が難しく、政治家の気持ちが分かった。失敗したと思ったのは、紙を最後まで残しておけばよかったこと。
○韓国
・ 貿易するときに譲らなかったので、5位になってしまった。道具を売るタイミングが悪かったからだと思う。
・自分たちがいいことをすると、いいことが返ってくることが分かった。国と国で助け合いが必要で、自己中心的でよくばりな国は、かならず悪い結果になると思う。
・先進国がぜんぜん道具を売ってくれなかったので、ぜんぜんもうからなかった。
○日本
・最初、道具がたくさんあったので、紙のことを忘れて値段の高いものを生産しようとしていた。そのあとに考えて貿易をした。
・効率がよくなることを考えて、なるべくたくさんかせげる方法を考えながらゲームをした。けれども、最初にはさみや鉛筆を交換しすぎて遅くなってしまった。
・資源(紙)を大切にしたので、値段の高いものをたくさん生産できて、たくさんもうかった。高い値段で道具を取引したのもよかったと思う。
○アメリカ
・道具がいっぱいあって、紙がなかったので、考えて貿易をした。
・自分たちは道具がいっぱいあるのが普通と思っていたけれど、まわりを見たら、分度器と紙だけという国などを見てビックリした。貿易の道具交換は頭を使わなければならなかった。
・1枚の紙で長方形を三枚作るより、円を二つ作るほうがお金をかせげることに気がついた。そこで、定規を全部売って、円をたくさん作ってたくさんかせいだ。最後のほうでは、道具をほとんど手放して、たくさんの紙と貿易すればよかった。

■小学生の感想 (授業後のアンケートより)
・貿易ゲームをして、私の班は日本でしたが、最初から道具がたくさんあって、他の国には1つ2つしかなく、世界でこんなにも差があるとは思いませんでした。「自分たちのように、何も困らない生活を他の国ではしていない」ということがよく分かりました。これからは、もっと資源を大切にしていきたいです。
・先進国と発展途上国の差がはっきりと分かりました。私たち日本は発展途上国を助けるような貿易をしていけたらと思います。自分の国のことだけでなく、世界のいろいろな国にも目を向けて貿易(豊かさを交換する、助け合う平等な貿易)ができたらいいです。この貿易ゲームで世界に目を向けることを学びました。もっと貿易を調べてみたいです。
・私たちの班はコロンビアでしたが、日本やアメリカとの違いが大変で、世界では大変な思いをしている国がたくさんあることを知りました。先進国は、もっといろいろな国をたすけていかなければいけないと思います。世界で助け合って、いい世界になって欲しいです。
・貿易ゲームと聞いて難しいのかと思いましたが、そうでもなく、他の国と「協力」し合って、自分たちの国を豊かにしようとがんばったところが楽しかったです。私はエチオピアの班でしたが、少し貧しかったので、日本やアメリカの班が「自分も貧しい国の班だったら」と思って、協力して手助けをしてくれて、どの国も平等になればよかったのに、と思いました。
・貿易ゲームをして、お金よりも人間関係とこころが大切だと思いました。もっと知恵をつかって、どうしたら同盟がうまくいくかを考えて、輸出・輸入をすればいいか、おちついて考えることが大切だと分かりました。
・貿易ゲームを通じていまの世界で起こっていることがよく分かりました。私たちはコロンビアの班でしたが、私は日本人なので、貿易についてもっと学ばなければならないと思いました。私が大人になっても、きょうの授業のことを忘れずに、いつかフェア・トレードを世界中で行い、みんながフェア・トレードを知っている世界にしたいです。きょうはありがとうございました。

■10月19日 「先進国と発展途上国」・「フェア・トレード」

後半は3クラス合同で「先進国と発展途上国の違い」「フェア・トレード」「わたしたちにできること」について授業を行ないました。
まず、先進国と発展途上国の貿易について寸劇を行ないました。あらすじは、 発展途上国できょうのゴハンにも困る労働者一家が先進国から来た商人に掘り当てた宝石の原石を一食の値段で買い取ってもらい、それを自国に持ち帰った商人は加工して大金を手に入れた、というもの。小学生たちは、口々に「ずるい」と言っていて、不公平な取引に憤りを感じていました。
次に、発展途上国の労働では、「1日に1ドル(100円)以下で生活している人はどのくらいいるでしょう?」と、問いかけました。小学生たちは「100万人」「120万人」
「200万人」と答えていき、最後に「1億人」という答えがありましたが、「10億人」という正解を聞いて驚いていました。また、「世界で流通する手縫いのサッカーボールは主に発展途上国で作られていますが、みなさんみたいな子どもが仕事として作っています」とスライドを見せて解説し、さらに「ボールひとつ縫い上げるのに5時間かかり賃金は1個で15円、一日に45円にしかなりません」と聞いて、もっと驚きの声をあげていました。
ここで、 「世界のこどもの7人にひとりは何らかの児童労働をしています。その原因は『自由貿易』です。自由貿易とは前の時間にした貿易ゲームのことです」と教え、発展途上国は先進国との貿易がやりにくかったことを思い出させました。
そして、豊かな国と貧しい国の差を埋める貿易として「フェア・トレード」を挙げました。フェア・トレードとは、先進国が発展途上国からより高い値段で継続的に商品を買うこと、とスライドにした図を使って教え、またそれに伴なう問題点として「フェア・トレード品は高い」「日本ではフェア・トレードにあまりなじみがない」「発展途上国のための完璧な救済手段ではない」ことを教えました。
最後に、「わたしたちにできること」として、欧米諸国でのフェア・トレードの取引量の多さと比較すると、日本はほぼゼロであるから、フェア・トレードを周りの人に教え、それを広げていってほしい、日本でフェア・トレードを知っている人が増えるとお店でもっと扱われ、取引量が増えると発展途上国の暮らしが良くなります、と締めくくり、水野ゼミの経済教育は幕を下ろしました。

寸劇を上演「発展途上国で産出する原石を安く買う先進国の商人」
「この男の子は、サッカーボールを手縫いしていくらもらえるでしょう?」

■経済教育の感想 (水野ゼミ2年 経済教育班)
小学校での経済教育の授業を行なうことによって、ふだん商学部で学んでいる理論と知識のフィードバックができ、また企画力や問題解決能力が身につきました。そして、私たち大学生が小学生に授業を行なうことは、楽しい異世代間交流になったと思います。さらに、児童労働やフェアトレードを教えることを通じて、ユニセフやスターバックスコーヒージャパン本社でお話を伺うことができるという、さまざまな出会いをすることができました。ご協力いただいた団体や企業の皆様、本当に有難うございました。

■校長先生のお話
今回の経済教育はよく準備され、大変楽しい授業を行なってくれました。児童の目の輝きが違い、そのことがいい授業であったことを物語っています。

前のページに戻る
チェーンプロジェクト概要GPニューストップページ │ このページのトップへ
明治大学トップへ 商学部トップへ 生涯学習・学校教育 文部科学省
Copyright (C) 2005 Meiji University, All rights reserved.