明治大学 平成17年度現代的教育ニーズ取組支援プログラム広域連携支援プログラム-千代田区=首都圏ECM-本プログラムは、文部科学省が公募する、平成17年度「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)に採択されました。」
Proj.5・8・9 〈南信州ブランド構築に向けた研究〉のための調査・研修(第2回)が行なわれました
(小川ゼミ・大友ゼミ・水野ゼミ)

9月1日から3日にかけて、長野県飯田市で2泊3日の調査・研修の第2回が行なわれました。

今回も、小川ゼミを中心として、大友ゼミ、水野ゼミの2・3・4年生が合同し、26名の学生が参加した研修となりました。
目的は、「南信州ブランド構築に向けた研究」を進めるため。今回の研修では、グループが設定し始めたテーマに沿って、講義や体験からヒントを得ていました。

また、グループワークの時間も設けられ、それぞれのテーマのために講師にお越しいただいてミーティングを行い、前回から一段階進んだ調査・研修となりました。

■9月1日

宿舎は前回と同じく「天龍峡温泉交流館」。ここでの講義から研修がスタートしました。

講義は南信州観光公社の高橋さんによる「南信州での体験型観光振興の取り組み」です。体験型観光によって観光地としてブランド化できた事例は、学生にとって大いに参考になったでしょう。質疑応答では、それぞれが自分のグループの研究テーマのための質問をし、グループワークに役立てようとしていました。

初日の夜の夕食会では、キャンドルの照明を使った演出で、地元産の無農薬野菜を調理したブッフェスタイルの食事がふるまわれました。
また、今回の研修をコーディネートしてくださったNPO法人FOPの杉浦代表が司会となって、「生きていて喜びを感じるとき」「生きていくために必要なもの」などを学生とディスカッション。そのあと、「生きていくためにはまず食べること」という意見から、生きることと食・農の深い関係を説明して、現在の食や農家が抱える問題を挙げました。売れるものを生産するために農薬を使わなければならないなどといったマーケットの思惑に左右されている現状から「売れるものを決めるのは消費者。消費者が食や農を知ることで考え方を変えればマーケットも変えてゆくことができます」と述べ、それを若い人にも知ってもらうためのイベント『春フェス09』への学生の参加を呼びかけました。

さらに、地元音楽バンドの演奏によるミニコンサートもあり、「楽しさ」から若者に地球環境問題などのメッセージを伝えていくFOPの活動理念が反映された初日の夕食会となりました。

なお、この夕食会の模様は、信州日報、南信州新聞の取材を受け、2紙の9月3日付紙面に、記事で紹介されました。

長野県の中で飯田の位置は
キャンドルナイトは地球に優しい

■南信州観光公社・高橋さんの講義 要旨
飯田市は長野県の観光地としてあまり有名ではない、しかし、地域振興のためには観光振興が必要で、しかも宿泊を増やしたい。そこで、修学旅行のための体験型旅行にシフトした。これは、田植えの喜び、農家のおばあちゃんとの交流といった「人と自然の体験」である。
この体験型旅行のポイントはふたつある。プログラム内容を「長い・難しい・厳しい・(価格が)高い」としたこと、観光課が窓口を一本化したことである。プログラム内容は、「本物の体験」として先生に評価され、窓口の一本化は、手続きの煩雑さをなくした画期的なことだった。たとえば、農家体験などでは、学校の先生と旅行会社が班行動のため各班の体験先を一軒一軒農家にお願いをしていったが、それを窓口がコーディネートしているのだ。
南信州の観光の最初はラフティングや乗馬のアウトドア体験、次に農業体験などのグリーンツーリズム、そして今、「農家民泊」が体験型旅行の主力になっている。たとえば、100人の生徒が五平餅作りを体験するのに30人以上の農家の方が来てくれ、わき合い合いと子どもたちが楽しそうである。そうした中から「今年も民泊ありますか?」との問い合わせが来る。そういう問い合わせに、受け入れ農家を確保できるのは地域連携システムを構築しているからである。
ほかに、体験型観光として、地元の方が案内することで臨場感が増している「桜守ツアー」や、この地域に多い和菓子屋の名店を巡る「和菓子探訪の旅」がヒットしている。

■9月2日

2日目の午前は、柿野沢センターという地元の公民館で昼食作りから始まりました。これは、地元料理作り体験で、昨日お話のあった体験型観光を自分で体験してみよう、というものです。

9人もの農家の方が講師として参加してくださり、五平餅作り、餅に塗る味噌、焼き茄子、漬物、野菜汁をそれぞれ班に別れて作ることとなりました。五平餅では、もち米をすりこ木でこねる作業が意外にも力を使うことが分かり、焼き茄子では、焼いてから皮をむく作業で熱い茄子を扱うことに苦労しながら作り上げました。

料理がすべて出来上がると、皆で昼食。すべて地のものを使った料理で、自分たちで作ったこともあり、口々においしいと言っていました。また、農家の方との交流もあり、「きょうのお昼ごはんを作るだけで大変だったのに、いつも作っておられるのですか」といった質問をしていました。

次に向かったのは、農業法人今田平という農園です。今度は体験型観光として農業体験を行なうのです。

学生たちは、どのような体験をするのか知らされていませんでした。わりあてられた仕事は、ブドウを出荷したあとの汚れたカゴの水洗いと、風雨で落ちたリンゴを拾い集めることでした。体験観光のための足洗い場で、次々とカゴを洗い、約300個すべてきれいにし、次は落ちて腐ったリンゴを拾い集めます。

学生たちは、作物の収穫などをするものと思っていたようで拍子抜けしていましたが、しだいにこの作業の意義を見出していました。「農業は苗付けや収穫ばかりではなく、こうした地味な作業の積み重ねなんだ」。きれいになったカゴと拾い集めたリンゴを見て、充実感を味わったようです。

2日目の最後は、かぶちゃん農園に向かいました。ここは、市田柿のブランド化に成功した企業です。南信州で普段の食卓にのぼっていた市田柿は、いまや高級品としてデパートなどで売られています。そのブランド化成功のカギを知るのは、今回の研修に大変参考になるでしょう。

かぶちゃん農園では、代表取締役の鏑木さんにお話をうかがいました。日本で誇れるものを作りたい、そして改めて見直す果物として柿があり、市田柿だった、というお話でした。質疑応答もあり、学生はブランド化のためのヒントをうかがいたいと考え、いろいろと質問し、ヒントを得て、宿舎に帰りました。

宿舎に帰ると、さっそくグループワークです。この時間のために、地元特産の水引組合の方や、農業行政の担当者がお越しくださり、それぞれのグループのブランド構築案にヒントを下さったり、提案をいただいたりしました。

また、その合間を縫って、ラジオ番組の収録がありました。これは、昨夜のミニコンサートに出演してくださった地元音楽バンドの方が地元ラジオ局でDJを務めており、学生に出演の打診があったものです。ゼミ生の代表は大学生が行なう地域活性化についてや、地域連携の意義などを話しました。


五平餅を炭火であぶる
カゴを洗うのも農業のうち
皆で市田柿を試食
水引組合の佐々木さんにお話をうかがう

■かぶちゃん農園・代表取締役・鏑木さんの質疑応答 要旨
Q:私は東京の煎餅屋の息子ですが、新しいことを始めるときに、新しいことと守旧ということをどのぐらいの割合で考えておられるでしょうか?
A:新しいことの中に古いものを見つけるということでしょう。そのバランスをとるということです。東京には六本木ヒルズがありますが、古い文化を入れ込んでいませんか?また、企業の社長は古いものを大事にします。社長室に神棚があるのを見たことがありますか?そこにヒントや要素があるのではないでしょうか。
Q:東京ではなく飯田で起業なさいましたが、飯田の良さはどこにあるのでしょうか?
A:空気・水・環境が揃っているところです。よみがえってくる感じがします。このなかで、いろいろな発見があります。ホウレンソウにオスとメスがあるのをご存知ですか?そういった生き物の豊かさをエネルギーにしています。
Q:かぶちゃん農園が成功した秘訣をお教え下さい。
A:人の縁・世の流れといったものを大事にしています。マーケティングではこう、とセオリーがあったとします。しかし、それはそれとして、人の縁で息が合う、うまくいく、という流れです。

■9月3日

最終日は、南信州の観光では天竜峡がひとつのポイントとなることから、天竜川を船で下って実際に目で見る、ということから借り上げ船による川下りを行ないました。

天候がよく、水かさも増えていなかったにもかかわらず、流れが速く、ときおり船が上下します。そうしたスリルを味わいながらも、川にかかる橋や釣り人や奇岩の風景など、川を下ることで目にできる観光資源をチェックしました。

船着場である弁天港から出発し、川路港へバスに先回りしてもらい、川路港で下船して、今回コーディネートしてくださったFOPの杉浦さんと小林さんにお礼を申し上げ、バスに乗車して帰路につきました。

「ありがとうございました!」

■学生の感想
・2回目の飯田市視察は1回目よりも「何をみるか」「何を知るか」という意識を持って臨めたように感じます。飯田市の自然やFOPの方々をはじめとする人たちの熱い気持ちを身をもって感じた3日間でした。今回お話しいただいた方や農家の方たちはとてもお人柄がよく、東京の喧騒を忘れさせてくれるかのような温かい交流になりました。きっと飯田市の「よさ」なんだろうなと思いつつ、この「よさ」をぜひ伝えていきたいと思いました。
FOPの杉浦様と小林様にはお伝えしましたが、たとえばバス移動ではなく歩いて移動するですとか、飯田市の「ひと」を見に行くというお時間を作っていただけるといいのかなと思います。私たちのような「そと」から来るものにとって「なか」の雰囲気(ひと・もの・空気)を感じないことには「よさ」を知りえないからです。
今回は農家の方たちの「よさ」を感じることができましたが、きっと飯田市民の方はほとんどの人が「よさ」を有しているのではないか、そう思います。私はその「よさ」に着目をして飯田市の地域活性化策を講じていきたいと思います。

・今回の合宿を通して、飯田市の良さを知ることができました。それは、たくさんの自然があること。東京では感じることができない、川の流れ、森のような木々の雰囲気、農業体験、そしてとても綺麗な星空。飯田にあった自然全てが東京にはない、私たちにとって新鮮なものでした。きっと、この自然というものを飯田からなくしてはいけないんだな、と感じたし、この自然を上手く活かすことによって、飯田の活性化というのは大きく飛躍するのではないかと思いました。
今回、飯田に行って感じたことをこれからのゼミ活動を通して、飯田市プロジェクトの基盤にしていきたいなと思っています。飯田の自然は楽しいものなんだ、とてもリフレッシュできるものなんだ、価値があるものなんだというのを東京の人々、飯田市の若者に伝えていけたらと思います。

・今回の南信州研修では自分の中で更に南信州ブランドのイメージが膨らみました。私の班が提案した野菜ソムリエに関するプランは飯田でしかできないことだと思っています。今は合宿中に調べることができなかった野菜ソムリエについてのデータを集めたりして、プランをより具体的なものにしている最中です。
私の出身地は富山県の氷見市という、所謂田舎で、飯田と同じように地域の活性化という課題を抱えています。だから研修中に出会った方々の地域を盛り上げたいという思いを一番リアリティをもって感じとったのは自分だと思っています。

・6月に引き続き2回目の飯田訪問だったのですが、前回の『プロジェクト概要の説明』とは違い、実際に飯田の魅力を体験するという目的で今回は訪問をしました。
まず、はじめに感じたことは飯田が主に力を入れている体験型観光は飯田がもつ地域的・人材的特徴を活かせているということです。飯田が行っている体験型農業はその地域の農家の方々の協力によって成り立っていて、それによって生まれる魅力を十分にターゲットとしている小・中・高校生に伝えられていると思いました。それだけに必要になってくるのが『どのようにこの飯田の魅力を多くの人に伝えられるか』だと思います。正直なところ飯田のように体験型観光を行っていて自然に囲まれ温かい地元の人がいる…このような場所は他にもあると思います。その中で
『飯田』という場所を観光や定年後のセカンドライフの場所に選んでもらうためには多くの人に飯田の魅力・地名を頭の中に残すようなアピールの仕方が僕達が考えるべき今後の課題であり、それが地域活性化につながるのだと思います。
飯田は来てもらえれさえすればみんなこの場所を好きになってもらえると今回の合宿を通じて確信しましたので、有効な提案ができるような頑張りたいと思います。

・前回飯田に行った時は、どんな場所なのかを知ったり、何をするかを考えたりしていたのであまり活動はできませんでしたが、今回の合宿では事前のミーティングや話し合いでテーマが決まっていたので活動しやすかったです。
グループワークで私達の希望していた水引組合の佐々木さんのお話を伺えたことはとても勉強になりました。その話し合いのなかで私達は水引を古紙から作りたいと相談したのですが、コスト等の問題で難しいと聞き、また水引の教室を開くにあたって講師をお願いしたいと相談したところ私達の希望と忙しい時期が重なってしまっていて、考え直すことになり残念でした。けれども、お話を伺って新たな課題やアイデアを見つけることができました。たとえば、杉浦さんと話し合いをした時に出たお守りのアイデアが素晴らしく、私たちで考えていきたいと思います。
今後の活動がさらに楽しみになり、そして今回の活動で水引を広めたい!という思いが強くなりました。

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