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●第6章 見本誌閲覧――米沢嘉博記念図書館でできること
里見 さて、今までずっと、理想論を語ってきたわけですが、これから開館する米沢嘉博記念図書館では、できることには大きな制約があります。そもそもスペース的な制約がありますし、初めて見本誌を一般の閲覧に供するということで、色々と考えていかなければならないことも少なくありません。見本誌閲覧関連の話題の最後に、それらについて語っていきたいと思います。
森川 米沢さんの蔵書によって図書館を作ることが現実味を帯びて、米沢さん、市川さん、里見さんに最初にこのビルの外観を視察していただいたのが、2008年2月の頭のことでした。そのときに市川さんから、コミックマーケットの見本誌を、部分的な形であれば、この図書館を使って見せることができるのではないか、というご提案をいただきました。コミケの見本誌を扱うとしたら、はるかに大きなビルを使う必要があるという固定観念が私にはあったので、このご提案には驚きました。
市川 先にも触れましたが、コミケットの理想と目的を受けて、コミケット準備会は自分たちで見本誌図書館を作りたいとずっと言い続けてきたわけですが、現実問題としては不可能なわけで、言葉だけのお題目になっていたところはあります。
  ところが、米沢嘉博記念図書館が現実化していくなかで、コミケットも米沢の重要な功績のひとつであり、見本誌図書館は米沢の30年間の思いでもあるわけなのだから、見本誌閲覧もこの中でならできるのではないか? という発想が生まれてきました。
とはいうものの、奥付の問題をはじめとしたサークルからの様々な意見というのもあり、そもそも現実としての施設上の制約もあります。それらをどうやって乗り越えていくかについて、真剣に考えていきました。
米沢嘉博記念図書館は、当然に米沢の蔵書が中心であり、見本誌は、コミケット一回分(400〜500箱)しか置く場所は確保できません。その中で見本誌を公開することを考えた場合、新しめの回の見本誌一回分を、年2回程度で期間を区切ってこの図書館にお貸しして、閲覧できるようにしようということになりました。なぜ、新しいものから見せていくのかと言えば、最近の同人誌は、詳細な情報が奥付にある同人誌は少なく、大多数の同人誌はクリアされるであろうという判断です。それでも、奥付に載っている住所・氏名・電話番号があれば、自己申告でシールをはって隠せるようにすれば奥付の問題はなくなります。さらに、会員制・閉架式にした上で、「サークル名」「参加曜日」「ブロック」といったコミケットのことがある程度知っていなければわからない情報を指定しないと見たい見本誌にアクセスできないようにすれば、冷やかしも防げるでしょう。また、CDやDVDといった再生のために装置を必要とするメディアについては、保全と適正な再生を両立させる再生設備の整備に研究を要するため、とりあえずは閲覧の対象とはしない……、こうしたことを色々検討していきました。
筆谷 コミケットでは、様々な形で参加者の意見を聞き、なるべく生かせるようにと努力してきました。この図書館に関しても、来た意見については検討し、参加者の不安を和らげられる落としどころを考えています。
  コミケット準備会が勝手にやって作っていくのではなく、参加者と一緒により同人誌の明るい未来のために、この施設を有効的に活用出来たらと思っています。ですから、開館した後でも、色々な意見が寄せられることを願っています。コミケットもこの図書館も大勢の協力が無いことには存在も発展もできないのですから。
里見 その意味で、率直に反省しなければ行けないと思うのは、準備会は、それこそコミケット第1回から今に至るまで、見本誌を収集・保存し、その見本誌図書館を求め続けており、機会ある毎に様々な言い回しでそれを語ってきてはいたにもかかわらず、その言葉をちゃんとまとめてこなかったということです。国立国会図書館の「カレントアウェアネス」で『CA1672 - マンガ同人誌の保存と利活用に向けて −コミックマーケットの事例から−』を書いたときにも参考にさせていただいたブログ『Myrmecoleon in Paradoxical Library. はてな新館』で、『とりあえず、まとめてみる――「コミックマーケット」見本誌図書館設立の希望』という記事があるのですが、ここでは、時系列的に様々なメディアを通じて、準備会が見本誌図書館を作りたいという意思を表明してきたことが収集・分析されています。本当はこうしたことは、準備会自身の手でやらなければならなかったことなのですが、日々のコミケットの運営に追われて、手が回らなかった現実があります。20周年史、30周年史という形で一部はまとめられてはいますが、そういった意味では、コミケットの歴史のアーカイブというのも今後の重要な課題だと思います。
市川 先日の間宮先生と米澤英子との対談の反響をネットなどで見ていたのですが、「マーケットに入るのに入場料を取られることはないのだから、一般参加者から入場料を取っていない」というところに、反応している人が何人かいました。
  私たちからすれば割と当たり前の前提だと思っていたのですが、知らないし、伝わっていない。コミケットが、今なぜこういう形で運営されているのかについて、その理由を教え切れていない状況があります。これは、一般参加者、サークル参加者、スタッフいずれについても言えることで、非常に反省しています。
安田 今回の見本誌閲覧の件をよいきっかけとして、我々から参加者の皆さんに情報を伝えていくことに前向きに取り組んでいきたいですし、今後米沢嘉博記念図書館が東京国際マンガ図書館(仮称)に発展していくにあたってのコミケットの協力においても、そのことは重要なことだと考えています。
森川 私も、コミックマーケット準備会をはじめ、さまざまな方々に、そうした伝達に使っていただける場となるような施設にしていきたいと思っています。そこにはアーカイブがあり、展示機能も持つわけですから、言葉による伝達だけでなく、モノを通して伝わるものも多くあるはずですし、伝えるための実験もできるはずです。

本日はありがとうございました。

(2009年4月30日 米沢嘉博記念図書館にて収録)

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