明治大学
English Korea Chinese 交通アクセス お問い合わせ サイトマップ
  明治大学TOP > 東京国際マンガ図書館 > 米沢嘉博記念図書館TOP > 企画ページ >「米沢嘉博記念図書館とは何なのか?」第1部3項
 
米沢嘉博記念図書館TOPへ

前へ<< >>次へ
●第2章 宙に浮くビエンナーレ展示物
森川 2004年の9月から11月までベニスで展示された後、船便で展示物が日本に戻ってきて、翌2005年の2月から3月まで、恵比寿の東京都写真美術館で再現展を行いました。それと同時に、展示物の最終的な落ち着き先をどうするのかという問題が浮上しました。
  通常の展示というのは、展示物を所有者から借りて構成し、会期後に返却して終わります。ところが、『おたく』展の場合はすべての展示物を展示予算で一から作りおこしたので、返却先のない展示物がまるまる残ったのです。製作している最中はとにかく作ることに必死で、先のことについては「ビエンナーレの出展物という箔が付くのだから、どこかの美術館が引き取ってくれるだろう」と気楽に考えていました。そして実際に募ってみると、いくつかの美術館や大学から引き合いがあったのです。ところが、4トントラック6台分という分量を伝えた途端に、先方の収蔵庫に入りきらないことが判明し、頓挫するということを繰り返すことに。「半分に分割してもらえるなら欲しい」という話もありましたが、この展示は分割すると力を大幅に減じてしまうので、それは避けたい。幸い、横浜市の廃庁舎を一年ほど間借りできることになり、そこに仮置きして寄贈先探しを続行させることになりました。

そうして2005年の夏の終わり頃、落ち着き先を探して右往左往している時に、さる財団が展示物に関心を持つかもしれないという話があって、その理事長にお目に掛かることになりました。するとその理事長が、もしも『おたく』展を要素の一つとして新しい常設施設が企画できるなら、関心を持ちそうな企業に呼びかけてコンソーシアムをつくり、設立を支援できるかもしれない、というのです。加えて、少子化で廃校舎となっている建物が都内に点在しているので、そうした建物を転用するのはどうか、というアドバイスももらいました。

正直に言ってどれくらい現実味のある話なのかはよくわからなかったものの、そのような提案と助言を受けて、駄目もとで施設計画を考えてみることになりました。もっとも、さきほど、『おたく』展の展示物が4トントラック6台分になると言いましたが、高密度な秋葉原的空間を再現するためにそのような容積になったのであって、展示面積は約250平方メートルに過ぎません。もちろん、中身がそれだけでは、とても常設に足る施設にはなりません。そこで連携の可能性を探るべく、米沢さんと、それから新宿区で現代マンガ図書館の館長をされている内記稔夫さんのお二方に、本件について相談に行きました。内記さんにはマンガ関係の研究会で見知って頂いていて、今や18万冊を超えて増え続ける蔵書のために、空間的問題を抱えていると以前からうかがっていました。

私は財団理事長から受けた提案を米沢さんと内記さんのお二方に話し、都内に常設的な施設を設立するという想定の下で、お二方が管理されている蔵書をそこへ移設できる可能性たずねました。するとお二方ともに、もしも場所が具体的になり、そこで恒久的に保存と運用ができるなら、前向きに検討できると言われました。それが、2005年の11月のことです。そのとき米沢さんには、コミックマーケット準備会で保存されている膨大な見本誌の図書館化についての構想や状況をうかがいました。その中で、実際に試算してみるととても難しいことがわかった、とか、ロシアの空母を買い取ってコミケ会場兼図書館にすることも考えた、といった話も出ました。
里見 すいません、いろいろ検討していたのは事実ですが、空母はいわゆる「ネタ」だと思います(苦笑)。
森川 ニューヨークには「イントレピッド博物館」という、廃空母を改修して作った博物館がありますが……それはともかく、そのときに米沢さんは、「色々な機会や媒体を通じて見本誌を図書館化したいということを語ってきたけれども、若いサークル参加者の中にはそういう認識が薄い人も多いだろうし、奥付のこともあるので、いざ実現ということになれば時間をかけて理解を求めていく必要がある」というようにおっしゃっていたのを覚えています。
 
そして、そのような話をうかがってから、私の目的意識は『おたく』展の寄贈先探しから、米沢さんや内記さんの蔵書などを複合的に保存できるような施設の設立へと、重心が移りました。最大のハードルは、やはり場所の問題です。近隣の商店街組合などの支援を取り付け、転用できそうな廃校舎がある都内の自治体に働きかけたものの、付近の住民の理解が得られるかわからないといった反応で、足踏み状態が一年くらい続いてしまいました。その間、『おたく』展の展示物を横浜から出さざるを得なくなり、一時期倉庫代を個人で負担することになったのですが、モノを保存するのがどれだけ大変かということを思い知りました。コミックマーケット準備会は、コミケで頒布される同人誌の見本誌を1975年の初回から回収し、今や累計200万冊以上を保管しているわけで、その費用や労力の凄さたるや……。
市川 見本誌は最初こそ米沢の個人宅に、その後、事務所に置かれていたのですが、ともかく増加の一途をたどって、千葉にプレハブ倉庫を3棟建て、今は埼玉の倉庫に保管しています。この埼玉の倉庫の所有については、お金もかかる話なのに米沢は英断したと思います。倉庫というのは買っただけではなくて、維持・管理費用も馬鹿になりません。コミケットが、見本誌の保管にかけている費用は相当額になっています。しかし、実際問題として、保管している同人誌を気軽に見ることができるかと言えば、大量の段ボール箱を積み上げているだけの状態で、気軽に見ることはできません。
安田 せめて準備会スタッフだけでもと思い、何度か見本誌読書会のようなことをしたのですが、日々の準備の間を縫ってでは、なかなかできるものでもない。
(見本誌倉庫)
筆谷 やったとしても、読書会のような一時的な場では、一日足らずしか時間が取れないわけですし、山積みの段ボールを掘り返して、目当てのものに行き着くことがまず一苦労です。
前へ<< >>次へ
駿河台キャンパス 〒101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1(代)03-3296-4545
和泉キャンパス 〒168-8555 東京都杉並区永福1-9-1(代)03-5300-1121
生田キャンパス 〒214-8571 神奈川県川崎市多摩区東三田1-1-1(代)TEL 044-934-7171
更新ページ一覧プライバシーポリシーこのサイトについて
© Meiji University,All rights reserved.