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小日向星一さん・小日向春平さん 対談
俳優・小日向 星一さん(2018年政治経済学部卒業)
俳優・小日向 春平さん(情報コミュニケーション学部4年)

NHK大河ドラマ『青天を衝け』に兄弟役で出演している小日向星一さん(2018年政治経済学部卒)、春平さん(情報コミュニケーション学部4年)。演劇一家に生まれたお二人は大学入学後に演劇サークルでお芝居を始め、兄弟として、またライバルとして切磋琢磨し、舞台に立ち続けています。今後さらなる活躍が期待されるお二人にお話を伺います。

変化する俳優への意識

―俳優を目指したきっかけを、お聞かせください。

星一さん(以下:星一) 中学、高校と6年間剣道を続けてきましたが、大学では何か新しいことを始めたいと考えていました。両親が劇団に所属していたということもあり、「実験劇場」という演劇サークルの新歓公演を見に行ったところ、公演の面白さに引かれてそのサークルに入りました。

大学に入学した時は将来的に俳優を目指すことは考えていませんでしたが、次第に演劇を続けたいという思いが強くなり、現在の事務所に入れていただきました。

春平さん(以下:春平) 僕も中高6年間剣道部で、大学に入学後は何をしようか悩んでいました。両親が演劇をやっていて、兄も演劇サークルに入ったことでできた、家の中の「春平もお芝居やるでしょ?」という雰囲気への反発心があり、「演劇を始めてたまるか」という気持ちが強く、入学してすぐには演劇サークルに入りませんでした。

いろいろなサークルに入りましたが、長く続かないうちに夏休みを迎えてしまい、観念して芝居を始めてみようと思いました。兄とは違う「演劇研究部」というサークルの演劇を見て、面白かったので入りました。そこからは兄と一緒で、将来のことを考えていく中で、どうしても芝居を続けたいと思い、今に至ります。

―現在は大学のサークルではなく、お仕事としてお芝居をされていますが、どのような違いがありますか?

星一 サークルでは、お客様からカンパを頂くことはありましたが、基本的にチケット代は0円でした。しかし、今はチケット代をいただき、わざわざ劇場に足を運んで見に来てくださるということを実感していて、仕事としてやっているという責任感が大きくなりました。

春平 僕もサークルは引退したので、現在はプロの方々と演劇をする機会が増えて、役者はもちろん、カメラや照明など、その道のプロフェッショナルの方たちが真剣につくり上げてくれた環境の中で芝居をするということに緊張を感じています。

―NHK大河ドラマに、お二人が兄弟役で出演されると決まった時はいかがでしたか?

星一 オーディションを受けた時にはそのような役はなかったので、まさか兄弟役で出演できるとは思っておらず、本当に驚きました。弟との初共演が初の大河ドラマ出演となったのは、ありがたいことだと思います。

僕が演じた松平容保という人物は、調べれば調べるほど忠義に熱い人物で、演じることが恐れ多いと感じていました。しかし、弟と一緒に現場に行くことで落ち着いて臨むことができ、全身で松平容保を表現できました。

春平 僕が演じた松平定敬は、容保に比べると歴史的にはあまり名前の知られていない方のようですが、だからこそ定敬に失礼にならないように、定敬本人が見たら誇らしいと思ってもらえるように、 誠心誠意演じることを心掛けました。

―大河ドラマの現場はいかがでしたか?

星一 セットが立派で、室内なのに屋外にいるようなセットもありました。スタッフも大勢いて、一流の方々と恵まれた環境で芝居をさせてもらっていると感じました。

春平 僕は学生という立場で役をいただけて、光栄なことだと思いました。また、現在コロナ禍でオンライン授業が増えていたことが、逆にチャンスになりました。オンライン授業はキャンパスに行かなくても授業を受けることができるので、仕事の合間に授業を受けたり、レポートを書いたりすることで学業と仕事を両立させることができました。

ただ、オンライン授業はとても便利ですが、やはり対面授業の方が良いと思います。教室で先生の生の声を聞くことや、友人と「授業大変だったね。この後ご飯どうする?」といった何気ない会話を交わすことも大学生活の一部なので、選ぶことができるなら僕は対面授業を受けたいです。

星一 公開されていない作品も含めると3〜4本の舞台がコロナ禍で中止になり、多くの方の生活が安定し、見に来てくださるお客様がいて初めて成り立つ仕事だということがわかりました。今こうして仕事をいただけること、多くの方に見ていただくことができるのは、とても幸せなことです。

話していなくても共通した今後への思い

―今後挑戦してみたい役はありますか?

星一 僕は見た目が少し幼く見られるので、今は温和な役や後輩の役をいただくことが多いです。今後は、その真逆の悪役をやってみたいと思っています。また、高校生の時の夢であったパイロットの役にもチャレンジしたいですね。

春平 僕も普段の自分とは遠い役に挑戦したいと思っています。今は新社会人のような若いからこそ任されるような役や、犯罪者役を任されることもありますが、知的な役にも挑戦してみたいです。普段の生活では使うことのないような専門用語を使って理論的に話をするような役が良いですね。

―俳優というお仕事の中で刺激を受けた方や尊敬している方はいらっしゃいますか?

星一 こまつ座の『イーハトーボの劇列車』という舞台作品で共演させていただいた松田龍平さんと山西惇さんが印象的でした。松田さんの舞台の立ち方にとても憧れますし、山西さんは、せりふで岩手県のJR遠野駅から上野駅までの駅名を毎回かまずに仰っていらして、本当に尊敬しました。

また、一度芝居でご一緒したことのある山寺宏一さんは、第一線で活躍されている方にも関わらず、誰よりも早くスタッフさんの名前を覚えるなど、芝居以外のことでも気配りをされていて、僕も見習いたいと思いました。

春平 僕は、TBSで放送されたドラマ『MIU404』でご一緒した綾野剛さんが、無名の僕に対して優しくしてくださったことが印象的でした。胸ぐらをつかまれるシーンでカットになった後、「ごめんね、大丈夫?」と、気に掛けてくださいました。

自分も俳優としての経験を重ねたら、今の自分のように緊張している若い俳優さんをリラックスさせてあげられるような優しい先輩になりたいと思っていて、その理想の先輩像が綾野さんです。

―ご家族でも演劇の話で盛り上がることはありますか?

星一 両親はお酒を飲みながら、 劇団での昔話をすることがあります。僕たちが演劇を始めてからは、 家族4人で演劇の話をすることも増えました。今でも第一線で活躍をしている父のことは俳優として尊敬していますが、やはり僕にとっては父であり「お父さん」という感じです。

春平 そうですね、家でもとても優しいですし。

星一 本当に怒られた記憶がないくらい優しい父ですが、芝居に関してはシビアな人だと感じることがあります。67歳になった今でも昔と変わらず睡眠時間を削って台本を読んだり、原稿のチェックをしたりしていて、僕もそういう風に仕事をしたいと思っています。

むしろ父のようになりたいというよりは、父を超えたいという思いがあります。僕たちは一生「小日向文世の息子」として見られますし、比べられることが多いと思いますので、時間はかかるかもしれませんが父を超えなければいけないと思っています。

春平 普段二人でこういうことを話さないので……。

星一 話さないよね(笑)。

春平 実は僕も友人と将来について話をしていた時に、同じことを言ったことがあるので驚きました。いつか「小日向文世の息子」ではなくて、「小日向文世が、小日向春平の父親」という風に認知をされたら面白いなと考えていたので、兄の話を聞いてとても共感しました。

価値観が合う友人でありライバル

―春平さんは、明治大学付属明治高等学校・中学校に通われていましたね。

春平 きれいな校舎に驚いたことが第一印象です。調布に移転したばかりということもあり、玄関や天井、吹き抜けや校庭など、見るもの全てに驚きました。こんな素晴らしい環境で6年間過ごすことができたら楽しいだろうなと予想した通り、実際に通った中学校・高校生活はとても楽しく、充実していました。

星一 僕も実は春平と同じ明治中学校を受験したのですが、惨敗してしまいました。それで大学受験の時にリベンジとして明治大学を受験しました。入学後に和泉キャンパスの広い敷地で送るキャンパスライフと、3年生から通うリバティタワーへの憧れもありましたね。

大学では演劇漬けの毎日でしたが、ゼミでは当時興味があったことを徹底的に研究するなど、好きなことに没頭する時間を過ごすことができました。明治大学は 「『個』を強くする大学」という理念がありますが、大学で過ごした4年間は今までで一番個性を磨くことができたと思っています。

春平 僕が学んでいる情報コミュニケーション学部は、自由に幅広い分野のことを学ぶことができます。高校の頃の進路選択では何を勉強したいかを決めかねていましたが、情報コミュニケーション学部に入学して、落ち着いて何を学びたいかということを改めて考えることができました。その結果として演劇を学びたいと考えたので、今は他学部履修を利用して文学部の演劇学関係の授業を多く履修しています。

星一 学生一人ひとりが何をしたいかということに、いろいろな選択肢が用意されていると思います。大学の中にチャンスがたくさんあるので、恵まれた環境でしたね。

―お二人はお互いのことをどう思っていらっしゃいますか?

星一 価値観の合う友人という感じがします。好きなものも似ているし、昔からけんかをすることもなくて、とても仲が良いですね。仕事上では、どうしても同じ父の息子という立場で、役を取り合う俳優同士ですから、僕はライバルだと思っています。お互いに刺激しながら、高め合っていけたらいいですね。

春平 そうですね。ライバルではあるのですが、兄に次の舞台が決まったら自分のことのようにうれしくなります。いつも応援しているので、良い関係だと思っています。

星一 半分自分みたいに感じているところがありますね。僕も、春平を全力で応援しています。

―ご両親に向けて、今だからこそ伝えたいことはありますか?

星一 俳優業を理解して支えてくれること、いつでも応援してくれることに感謝しています。父と母の子だったからこそ、今僕は芝居をしているのだと思いますし、役者として成長していくことが両親に対して一番の恩返しだと思うので、見守っていてくださいという思いです。

春平 兄とまったく同じ気持ちです。演劇に対して反抗心もありましたが、今おかげさまでとても楽しく過ごせているのは両親の血なのだと思います。両親の子として恥ずかしくないような、一人前の役者になれるようにがんばりたいです。

―それでは最後に、明大生へメッセージをお願いします。

星一 自分の好きなことや興味のあることに、全身全霊で邁進してほしいと思います。本当に微力ですが皆さんを応援していますし、僕も卒業生として精一杯取り組んでいきますので、一緒にがんばりましょう!

春平 今はコロナ禍で、友人に会えなかったり、サークル活動ができなかったり、いろいろ苦労があると思います。それでも、自分のやりたいこと、楽しいと思うことを続けていくために、時には自分を甘やかすということも必要だと思います。同じ明大生として、この時を乗り越えましょう!

―お二人のお話を聞いていて、とてもうらやましいご関係だと感じました。本日はありがとうございました。

小日向 星一(右)
俳優
1995年東京都生まれ。2018年明治大学政治経済学部卒業。主な出演作品に、TVドラマ『ケイジとケンジ』『浮世の画家』『セブンティウイザン』『青天を衝け』、映画『向こうの家』『星屑の町』、舞台『イーハトーボの劇列車』『染、色』など。

小日向 春平(左)
俳優・情報コミュニケーション学部4年
1998年東京都生まれ。明治大学付属明治高等学校・中学校出身。主な出演作品に、TVドラマ『MIU404』『青天を衝け』、映画『藝大の怪談~拳銃』など。

劇団で出会ったという両親のもとに生まれる。兄弟ともに高校までは剣道に打ち込み、大学在学時から演劇に挑戦。明治大学シェイクスピアプロジェクトへの参加や、演劇サークルの活動などを通して俳優の道を志す。2021年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』に、兄弟役で出演するなど、今後の活躍に注目が集まる。父親は俳優の小日向文世。