便利な生活のカギを握る「半導体」
―東京エレクトロンはB to B企業ということもあり、あまりCMなどで名前を目にする機会はありませんが、実は生活に密着した企業だと伺いました。まずは事業内容について教えていただけますでしょうか。
皆さんが日々利用しているパソコンやスマートフォンなど、便利な生活に欠かせない電子機器の多くには、半導体やフラットパネルディスプレイが使用されています。東京エレクトロンはこの半導体とフラットパネルディスプレイをつくるための装置を開発、製造するとともに、優れた技術サポートを提供する企業です。TVのCMなど積極的に行っているわけではないので、東京エレクトロンの社名を聞く機会は少ないかもしれませんが、実は多くの人と関わりの深い会社なのです。
―半導体の需要はまだまだ高まっていくのでしょうか?
高まる一方です。昨年(取材時点)2020年は、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延、また、日本における集中豪雨、北米でのハリケーンや寒波など、気候変動による自然災害が多く発生しました。加えて、貿易摩擦に代表される地政学的問題、また、人権問題などグローバルにさまざまなことが起こり、社会や人々の生活に大きな影響を及ぼした年となりました。このようなさまざまな課題を背景に、現状をVolatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取って「VUCA(ブーカ)」と表現されることがあります。一方、私たちの日常やあらゆる産業でデジタルトランスフォーメーション (DX) が進み、改めて情報通信技術 (ICT) に必須である半導体の重要性が際立った1年でもありました。かつてないスピードでデータ社会への移行が進む中、地球環境問題への解決に向けた取り組みもあり、〝デジタル×グリーン〟が世界の大きな潮流となっています。ここでいうグリーンとは、〝カーボンニュートラル〟すなわち、二酸化炭素の排出量を抑える〝脱炭素化〟を目指すことです。このように、どのような状況でも経済活動が止まらない、強くしなやかな社会の構築に向けて、世界は今、ICT、DX を強力に実装するとともに、脱炭素社会の実現に取り組んでいます。この実現には半導体の技術革新が重要になります。

―ITの進化で生活はさらに変わるのかもしれませんね。
ガラッと変わると思っています。今後、自動車の自動運転などの新たなテクノロジーの進化やスマート工場、農業、医療、そしてスマートシティなど、あらゆる産業のデジタル化が社会に広く浸透していきますが、その全ての根幹に位置し支えるものは、〝半導体〟です。半導体は、コンピュータやテレビに使われ、さらに携帯電話へと広がっていきましたが、もはや、その存在はモノを動かす単なるチップではなく、社会全てのインフラとなっています。半導体があってこそ、社会のデジタル化が可能になります。その半導体に対する技術要求は、さらなるメモリーの大容量、高速通信、高信頼性、低消費電力など、留まるところを知りません。
―地球環境の保護という観点ではどうなのでしょうか。
「デジタルとグリーン」の両立には当然取り組まなければならない課題があります。現在、大量のデータの配信やオンラインサービスが立ち上がっていますが、そのためにはデータセンターが必要です。関東に米国大手企業のデータセンターがありますがその市の人口は、約10万人。ところが、その電力消費量は、東京エレクトロンの工場がある人口約80万人の山梨県に匹敵します。こうなるとITで暮らしを便利にするのは良いけれど、CO2の排出の観点では疑問が生まれます。デジタルとグリーンを両立させるうえで重要なカギを握るのは「低消費型電力」で、東京エレクトロンは低消費電力の半導体をつくることにも尽力しています。半導体の技術革新を通して地球環境の保護に貢献することもまた、当社のミッションです。
―聞けば聞くほどその重要性が伝わってきます。これからさらに市場が盛り上がっていきそうですね。
1947年にトランジスタが誕生しました。そこから70年経った現在、半導体の市場は約4000億ドルにまで成長しています。さらに2030年頃には1兆ドルになるという予想もあります。(出典:WSTS,IBS)70年かけて出来上がった市場が次の10年で倍以上になるわけです。この辺りは非常に楽しみなところですね。
―就職先として興味を持つ学生も増えそうな気がします。
東京エレクトロンはCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)経営を意識しています。事業活動を通じ、デジタルとグリーンの両立という世の中の共有価値の創造に貢献することを通じ、社会価値と経済価値を生むのと同時に、そこで働く人にもハッピーになってもらえるような会社を目指していますから、ぜひたくさんの学生に興味を持っていただきたいですね。
