明治大学
English Korea Chinese Chinese 交通アクセス お問い合わせ サイトマップ
明治大学TOP > 社会科学研究所TOP > 講演会・シンポジウム > 学内講演会
社会科学研究所
事業案内
研究活動状況
出版刊行物
公開講演会
所員のみなさまへ
講演会・シンポジウム 学内講演会
学内講演会| 学外講演会 シンポジウム
第27回明治大学社会科学研究所 公開講演会
東アジア共同体は幻想か−巨大市場と体制−
後援/千代田区
10月22日(土) 13:00〜17:15(各回講演90分,質疑応答30分)   
第1回 「中国の台頭と日本」          
講師:関 志雄 (株)野村資本市場研究所シニアフェロー      
第2回 「東アジア共同体とアメリカ」          
講師:伊藤 剛 明治大学政治経済学部助教授             
10月29日(土) 13:00〜17:15(各回講演90分,質疑応答30分)      
第3回 『東アジアの金融経済統合と「制度化」の可能性』          
講師:勝 悦子 明治大学政治経済学部教授      
第4回 『朝鮮半島の脱冷戦と東アジア共同体』          
講師:李 鍾元 立教大学法学部教授    
会場 :千代田区神田駿河台1−1
明治大学駿河台校舎リバティタワー1階 リバティホール(1013教室)     
受講料:無料(申込み不要。直接会場にお越しください)    
受講対象:社会人・学生    
問合せ先:社会科学研究所 TEL 03−3296−4136

総合テーマの趣旨
 WTOの貿易自由化交渉が行き詰まりFTA(自由貿易協定)が世界の潮流となるなか、アジア域内においてFTA・EPAの締結が盛んとなっている。東アジアは世界で最も元気のある経済地域であり、わが国でもアジア地域の安定成長を持続することを目的に、日中韓3カ国と東南アジア諸国連合(ASEAN)からなる「東アジア共同体」構想の実現が政策目標とされるなど、積極的な取組みが見られる。すでに貿易・投資分野では、アジア域内の相互依存関係は一段と強化されており、地域協力は貿易・投資にとどまらず、環境、科学技術、エネルギーなどの分野にも広がろうとしている。一方で、本年春にみられた中国の反日デモ、中台問題、日韓竹島問題、北朝鮮の核問題など、とりわけ日本と中国・朝鮮半島間の緊張関係が高まっており、これら近隣諸国との関係悪化が経済関係に悪影響を与えることも懸念されている。
  今回の連続講演会は、東アジア共同体が実現可能かどうかを、政治・経済両面から捉えることを目的とする。共同体設立の先輩であるEUと比較されることが多いが、歴史、体制、経済構造など様々な面でEUと東アジアでは大きな違いがある。講演では、中国の台頭と日中関係、東アジア共同体とアメリカ、東アジアにおける「制度化」の可能性、朝鮮半島の脱冷戦と東アジア共同体といった様々なテーマで検討することにより、東アジア共同体について多角的に考えることとしたい。
「中国の台頭と日本」
講師:関 志雄 (株)野村資本市場研究所シニアフェロー
 中国の追い上げを受けて、日本では産業空洞化の問題が浮上し、さらには競争力を考える時にも中国の存在がクローズアップされるようになった。低賃金を武器に中国は「世界の工場」として台頭してきたが、その実力を客観的に分析してみると、日本と中国の経済発展段階には、まだ大きな格差が存在している。また、日中両国の関係は競合的と言うよりは補完的である。日本企業が対中ビジネスを展開する際、中国の強みを活かし、その弱点を補うことが成功の鍵となる。日中の各企業が日中間の潜在的補完性をさらに発揮できるようにするためにも、両国はFTA(自由貿易協定)構築などを通じて貿易を妨げている規制を撤廃しなければならない。日本にとっては、自動車を始めとする国際競争力を持つ産業を国内に残すための空洞化対策である。一方、中国への進出が必要となる企業は中国の優秀な人材を獲得し、経営の現地化を図らなければならない。
「東アジア共同体とアメリカ」
講師:伊藤 剛 明治大学政治経済学部助教授
 20世紀後半の間、アメリカは、アジアをイデオロギー的に分断することによって利益を得てきた。冷戦が終結した現在でも、共産主義体制は残り、また過去の歴史問題がアジアの国家間協調を妨げている。アジアの域内貿易の比率が上昇したことは事実だが、他方で、アジア諸国と米国との貿易依存度もかなりの分量である。10年以上経済成長を続ける中国こそ、そのアメリカに対する貿易依存度は抜きん出ている。
 中国が推進する「東アジア共同体」は、このようなアジア太平洋地域の現状に変更を加えようとするものであるからこそ、アメリカは「共同体」構想に疑問を呈してきた。アーミテージ前国務次官が「アメリカ外し」と言って批判を加えたことは記憶に新しいが、アジアが「共同体」として一体化することは、これまでアメリカがアジア地域に対してもっていた優位が揺らぐことになりかねない要因をもっている。
 アメリカの対処法は、2点考えられる。第一は、東アジアに残存する対立要因を巧みに利用して、地域の一体化に向けてのスピードを遅くすることである。と同時に、第二に、米中相互依存の舵取りを巧妙化していくことである。具体的には、「東アジア共同体」から閉め出されないように中国との貿易を継続しながらも、人民元との通貨調整を要求することであり、日本に対しては、「共同体」の開放性をチェックさせることである。
「東アジアの金融経済統合と「制度化」の可能性」
講師:勝 悦子 明治大学政治経済学部教授
 東アジア諸国においては、域内貿易比率の急激な増大と直接投資を中心とした域内資金フローの急増を背景に、とりわけ90年代以降金融統合の度合いが顕著となっている。また、97年のアジア通貨危機までは東アジア諸国の通貨制度はおおむねドルペッグであったものが、危機国の変動相場制への移行とともに、域内通貨の連動性は高まっている。中国をハブとした域内の生産工程確立は域内貿易・投資比率を上昇させており、これに応じて中国元先物相場と円を含む東アジア通貨の連動性も高まっている。本年7月に突如発表された中国人民元のバスケットペッグ制移行もこうした傾向を強めると考えられており、東アジアという巨大市場において金融通貨統合の枠組みは出来つつある。
  しかしながら、EUのような「制度化」が東アジアで可能かといった視点で考えると、その実現には様々な障害があるだろう。第一に、アジアでは未だに冷戦状態が残っており、政治体制の違いが依然として大きいことがある。第二に、経済構造や経済力の違いがEUに比べて格段に大きいことがある。第三に、「制度化」といった場合には法制度の標準化が必要であるが法的インフラについても隔たりが依然として大きいことである。中国の台頭によりアジア域内経済関係は一層緊密化しており、また中国元のレジームチェンジもあり東アジア通貨圏はすでにドル圏ではなくなっているとも考えられる。しかしながら、ユーロのような共通通貨の実現には多くの時間がかかるだろうし、ERMのような制度的通貨統合でさえ現状では難しいだろう。
「朝鮮半島の脱冷戦と東アジア共同体」
講師:李 鍾元 立教大学法学部教授
 日本ではあまり知られていませんが、韓国は「東アジア共同体」構想で中心的な役割を果たした国の一つです。1998年、金大中大統領の提唱で、ASEAN+3(日中韓)の中に、「東アジアビジョングループ」(EAVG)が設けられ、その報告書(2001年)「東アジア共同体に向けて」が出されました。「東アジア共同体」構想をまとめた初めての公式文書です。後継の盧武鉉大統領も「北東アジアの地域協力」を中心的な政策課題として掲げました。政府だけでなく、韓国では、「東アジア」という「地域」への関心が社会的に高まりつつあります。韓国の外交および対外意識を中心に、「東アジア共同体」の持つ意味について考えてみたいと思います。分断国家として、朝鮮半島の脱冷戦を進めるためには、地域協力の枠組みの中で、「北朝鮮問題」の平和的な解決を模索しなければならない事情があります。
 また、貿易や投資の拡大などの経済的な利害関係も大きな要因です。さらに、韓国としては、北東アジアの地政学的な変化が地域に新たな対立や亀裂を触発する事態は、避けなければならないシナリオです。地政学的な変容は、ナショナリズムの悪循環を引き起こすかも知れません。脱冷戦の新たな地域秩序形成、グローバル化や「電子民主主義」の時代と国民国家の再編など、重層的に押し寄せる変化への対応という点では、日本と韓国は共通の課題を背負っているともいえます。
  ページ先頭へ

© Meiji University,All rights reserved.