Go Forward
大学の使命は長い間、「研究」を通した真理探究と、「教育」を通した人材育成でした。それらに新たな使命として「社会貢献」が強調されるようになったのは21世紀に入ってからです。もちろん教育・研究を通して直接的・間接的な社会貢献はこれまでも展開されてきましたが、「社会貢献」が大学の使命の一つとして位置付けられるようになった背景には、複雑化した社会課題や変化のスピードが速い現代社会において、大学の「知」が果たすべき役割への期待が高まっていることが挙げられます。「社会連携」の「連携」は「社会貢献」の手段を意味します。大学が、社会を構成する多様な主体—産学連携の企業のみならず、行政、公共団体、NPO/NGOや一般市民—と連携し、コミュニケーションのチャネルを確立することで、人々のウェルビーイングに貢献していくことが、今、求められているのです。
さて、明治大学は2019年に10年後のビジョン「グランドデザイン2030」を発表しました。その中では「社会連携・社会貢献」の使命達成のために4つの重点施策が策定され、本学の特性を生かした全学的な活動の方向性が示されています。
1つ目に、校友をはじめとする全国的なネットワークと国内外で活躍する校友・関係者との連携を通した社会貢献活動が挙げられます。そこには本学が近年強化してきた国際力を生かし、教育・研究の場としての海外ボランティア派遣や海外インターンシップ制度、海外の高等教育機関との連携事業も含まれています。次に、2つ目の施策として、リカレント教育を含む生涯学習の拠点としての役割があります。リカレントとは「回帰」を意味し、社会に出てからも教育・訓練機関などで学び、生涯にわたって学習を続ける教育のことです。図書館・博物館や研究機関と連携したシンポジウムなどの開催から、リバティアカデミーや各学部・機関で実施される公開講座まで、「学び直し」の機会を提供していくものです。
3つ目には、日本国内の公的組織や企業と連携した事業が位置付けられています。本学が教育・研究を通して蓄積した知を活用し、ベンチャー支援やオーダーメイド型研修等、国全体および地域社会のニーズに対応した事業展開を目指すものです。そして4つ目に、わたしたちの豊かな社会生活に欠かせないスポーツ・文化等の活動による社会連携の推進を掲げています。体育会各部・学生団体・サークル等は日頃より地域社会の支援を受けながら、そして共に活動を展開しながら、学生自らの学びとともに地域社会の人々とのつながりを構築しています。
これらの重点施策は、多様な主体との連携を通し、総合大学の強みを生かした「基礎から応用までの大学の学術知」を社会に還元していくという基本方針に基づくものです。社会貢献という言葉を語るとき、社会的ニーズに大学が応えられているのかという問いかけが必要ですが、ニーズに応えるということは私利の要望に振り回されるということとは違います。学術機関として社会の「本質的なニーズ」を見極めることも含め、真の意味で大学が持続可能な社会の実現に向けて貢献していくこと—それが本学の社会連携・社会貢献の果たす役割であると考えております。