21世紀のはじめ方
鞍田 崇 准教授
DIY(Do It Yourself)やセルフビルドなど、近年暮らしのあり方を自分の手で創造していくことに注目があつまっています。与えられたライフスタイルをただ消費して生きるのではなく、多くの人が、社会と暮らしの別の選択肢(オルタナティヴ)を求めていることの現れとみることができるでしょう。そうした動向と連動して、いま注目を集めているのが「民藝」。ここでは、あらためていまなぜ「民藝」かの検討を通して、新しい世紀にふさわしい、新しい暮らしの〈かたち〉について考えていきます。でも、なぜか。社会が大きく変わりつつある、いや大きく変えなきゃいけない時代だからです。この講義を機に、特にみなさんにぜひ考えていただきたいことが2点あります。


1)人口減少日本の人口は10年前にピークを越え、すでに人口減少期に入っています。20世紀の100年で、4千万人から1.2億人まで一気に3倍に増加した人口は、これから急速に減少していきます。推計では、100年後の人口は多くても現在の半分の6千万人、少ないシュミレーションでは3分の1、つまり100年前の規模にまで縮小するといわれています。人口増加期の発想とは異なる、新しい社会像、生き方が求められています。それはどういうものでしょうか。
2)つくることからの撤退20世紀後半の高度経済成長の後、日本の製造業の多くは生産拠点を海外へ移転してきました。日本社会はすでに工業化のステージは終え、ポスト工業化社会にあります。工業化に代わって経済活動の主たる要素となったのは、消費です。つくることよりも、買うことを軸にした社会にいま日本はあります。しかし、果たしてほんとうにこのままでよいのでしょうか。
この2点は、決してひとごとじゃありません。みなさん自身がいやおうなく直面せざるをえない問題です。どう解決するのか。それを考える能力を培うこと、目標はそこにあります。
講師プロフィール

鞍田 崇 准教授
明治大学理工学部専任准教授。1970年兵庫県生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。博士(人間・環境学)。総合地球環境学研究所(地球研)を経て、現職。著書に『民藝のインティマシー 「いとおしさ」をデザインする』(明治大学出版会)ほか。民藝「案内人」としてNHK-Eテレ「趣味どきっ! 私の好きな民藝」にも出演(2018年放送)。
映画の中の「パリ」
清岡 智比古 教授
このゼミでは、パリを描いた映画を見て、その分析を行いながら、(大げさに言えば)今の世界の状況を理解していくことを目指します。ただ……パリ、と聞くと、金髪の男女が恋を語り、おしゃれを楽しみ、ワインを飲み比べ、おいしいフランス料理を食べている……、というようなイメージが浮かぶかもしれません。朝のクロワッサン、午後のカフェのテラス、夜はオペラ座でのコンサート、あるいはサン・ジェルマン・デプレのビストロでワインを傾ける、とか。
たしかにそうした「パリ」もないわけではありませんが、それはいわば、日本(やフランス)のメディアがみんなでなんとか支えている幻想、という面もあります。だからこのゼミでは、こうした「パリ」にはほとんど触れません。では、どんな「パリ」を見ようというのか?
それは端的に言えば,多様な文化の交差点としてのパリです。アフリカから、カリブ海から、アジアから、様々な理由でパリにやってきた人々。そして今、彼らの存在抜きに、パリを語ることはできません。こうした状況を、映画を中心に、ポップ・ミュージック、アート、などを通して見てゆこうというのが、このゼミのテーマです。当然、ストリート・ヴューも大活躍します。(こうしたこと全体の背景には、グローバリゼーション/グローバリズムの問題があります。この点も考えてゆきます。)


街歩きが好き。都会が好き。異文化に興味がある。パリに興味がある。日本語世界に閉じこもらない、広い視野が欲しい。「現代」について考えてみたい……。こんな人は大歓迎です。ただし,「今」を理解するには,どうしてもある程度「過去」を知る必要があります。(指定された教科書には,そのあたりのことが書いてあります。)また、たとえば映画1本について、予習と、見終わった後の分析レポートが課されるので、レポートの数は多くなります。
このゼミに積極的に取り組んでくれれば、いつかみなさんがパリを訪れるとき、観光ガイドをはるかに超えた次元で、パリを経験することができます。
講師プロフィール

清岡 智比古 教授
専門はフランス語、フランス文学。最近はフランス語圏文化やパリを研究対象としている。主要著書として、『エキゾチックパリ案内』(平凡社)、『フラ語』シリーズ(白水社・全5冊)、『ハートにビビッとフランス語』(NHK出版・共著)、『東京詩』(左右社)、『小さな幸福』(小沢書店)、『混成世界のポルトラーノ』(左右社・共著)などがある。NHK「テレビでフランス語」講師。