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和泉ラーニングスクエア建設関係者座談会
「記憶に残る和泉キャンパスの原風景づくり」

明治大学創立140周年事業の目玉である「和泉キャンパス新教育棟(仮称)整備計画」(和泉ラーニングスクエア)が2022年春の竣工に向けて現在進められています。ここでは本整備計画の設計を担当する株式会社松田平田設計の設計部長、建設工事を担当する戸田建設株式会社の作業所長をお招きし、施設課職員と鼎談を行いました。

(左から)
田中 智三 戸田建設株式会社 明治大学和泉キャンパス 新教育棟(仮称)整備計画作業所長
山﨑 敏幸 株式会社松田平田設計 総合設計室 第三建築設計部長
菅 和禎 学校法人明治大学 管財部施設課

整備計画にかけるそれぞれの思い

 昨今、大学での学びは学生が主体的、対話的に学ぶアクティブラーニングという学修スタイルが定着してきていますが、和泉キャンパスではそうした今の時代に必要とされる新しい学修環境・学びの空間が少ないことが課題とされてきました。また、主に学部の1・2年生が学ぶキャンパスのため、そうした新しい学修や多様な学びに興味を持ってもらえるように、「人が集まる場所をつくり、その空間を魅力的に演出する」ことを目指しました。

具体的には、「いつでも気軽に来やすく、親しみやすい空間」、「ここで勉強していたらかっこいいなと思えるスタイリッシュな空間」、「居心地が良くて、長く滞在できる空間」を意識し、和泉キャンパス内の他の建物にない空間を数多く計画しています。また、堀口捨己先生(本学建築学科創始者、現在の和泉キャンパス第二校舎を設計)の精神を現代版に置き換え、建物や中庭を含めたキャンパス整備を実施したいと考えています。

山﨑 和泉図書館設計時から10年が経過し、学修環境も大きく変化しています。設計初期段階では図書館設計時と同様に、大学関係者と数多くの他大学を視察し学びの空間を共に研究することから始めました。また、大学からの多様な要求に対し多角的な検討をするため、通常より倍の所員を動員し大学の思いに応えられる体制を整えました。

堀口捨己という明治大学を代表する建築家が設計した建物の建て替えということで、設計者として第二校舎の記憶を継承し、その学修環境を現代的に再解釈して計画に生かし取り組むこととしました。具体的には、学生の活動を建物外部に創出することを考え、屋外通路の回遊性、学びや交流スペースの屋外テラス、建物内外に連続する一体的なラウンジなどを計画し、学生たちがリラックスした環境で学ぶことができるラーニング・コモンズを目指しました。

田中 私は駿河台キャンパスのグローバルフロントの建築に携わりましたが、明治大学の建物に共通するのは「かっこいい」ということ。ですが、「かっこいい」建物は施工的には非常に難しい作業が伴います。今回は各所に吹き抜けがあるため、足場づくりが困難であったこと。また、天井が無いという仕上げになっているため、通常であれば天井に隠れるところが見えてしまうなど、色々と神経を使っています。

私たちは、設計図どおりつくるだけが仕事ではなく、ユーザー、今回で言うと学生の皆さんを思い描きながら、安全安心に使える建物になっているかということを考え、そのための提案を積極的にすることを大切にしています。

こだわりが詰まったエントランスホール

 エントランスホールは設計の段階から特にこだわった空間です。自然光が落ちる3フロア分の吹き抜けに、少し曲がりながら3階まで上がる階段を中央に配置して、学生を上階に引き込むように工夫しています。

また、吹き抜け周りの手摺や階段の踊り場にハイカウンターを設置し、この広い気持ちの良いスタイリッシュな空間で、いつでも気軽に勉強できるようにしています。

さらに、手摺から飛び出すガラス張りのグループボックスで、学生が議論やプレゼンテーションをしている姿を吹き抜け側に表出させることで、いつでも人でにぎわう、活気あるエントランスホールの空間を演出しています。

山﨑 吹き抜けが大きすぎると、エントランスホールから見える学生の活動の臨場感が伝わらないので、上階での活動が明確にわかるようにその距離感を重視しました。また、従来の建物のような階段やエスカレーターなどの人の動きが見える空間デザインではなく、学生が自然とエントランスホールに集まり活動している姿で溢れる、まさに学生が主役となる空間づくりを目指しました。

田中 初め図面を見た時に、どのような吹き抜けになるのか理解するのに苦労しました。コンピューター上の立体モデルでイメージをしていましたが、実際に建物ができてくると、「自分もここで学びたい」と感じる空間になりました。一歩ごとに室内の空間が見え隠れすることで雰囲気が変わるので、場の展開が人を引き付ける空間だと思います。

利用する学生へ向けて

山﨑 和泉ラーニングスクエアはシンボル的な建物形態や外観をデザインとした建築ではなく、学生の活動そのものを一つのシンボルとしたデザインとしています。設計ではいろいろな活動を想定し、多様な仕掛けを設けていますが、学生の皆さんが、私たちが想像していなかった使い方で活動していたら、それもまたうれしいです。学生主体のさまざまな活動が常に満ち溢れていてほしいです。

田中 近年、仕掛学という研究が進んでおり、戸田建設でも同様の取り組みを始めていますが、この建物にもたくさんの仕掛けが用意されているので、学生の皆さんには楽しみにしていただきたいです。

 このキャンパスで過ごす学生たちの記憶の中に永く残り、誇りとなる建物をつくりたいと思い、和泉図書館、正門、外構整備の時から「学生たちの誇りとなる建物やキャンパス」「記憶に残る和泉キャンパスの原風景づくり」の実現を目指してやってきました。明治大学のキャンパスで、たくさんの友達や多様な学修など、さまざまな出会いがあってとても楽しかった、と卒業してからも、その思い出の風景をいろいろな人に話をしてくれていたらうれしいです。

建物が完成し、学生皆さんの活動、友達との勉強や広場でのランチなど、みんなが楽しく笑顔で過ごす、そんな姿を見ることが今からとても楽しみです。そして、一生付き合える友達という財産を、この明治大学のキャンパスでたくさんつくってほしいなと思います。

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