学際系総合研究Ｂ

地域コニュニティ・ファシリテーション研究

担当者

長畑　誠　大学院客員教授

授業内容

国民国家の成立と資本主義経済の進行によって、長年にわたって人々の生活・自治単位であった「地域コミュニティ」はその多くの機能を国家と市場に代替され、変質し崩壊しつつある。しかし現在、公的セクターは少子高齢化や財政難の中できめ細かいニーズに応えることが難しい状況になり、営利セクターはグローバル化による競争の激化の中で経済的な合理性にそぐわない財やサービスの提供が難しくなっている。こうした中、地域の課題解決に向けて人々のボランタリィな活動が重視されるようになり、近年は旧来型の地縁組織だけでなく、志を同じくする人々によるNPO活動も盛んになりつつある。「地域コミュニティ」の変遷と今後の展望を、日本とアジア各国の具体的な「地域づくり」「コミュニティ開発」の事例から考え、具体的に現場に関わる際のファシリテーション手法やNPO運営等、実践的な方法論も学ぶ。

授業計画

第一部「コミュニティの原型とその衰退」
(1)イントロダクション〜コミュニティとは何か〜
授業に関する説明とともに、学生自身の自己紹介とコミュニティを振り返る作業を行う。
(2)コミュニティの歴史的展開
近代化以前の社会におけるコミュニティの役割やボランタリィな人々の関わりを概観する。
(3)途上国におけるコミュニティ
地域コミュニティの持つ「底力」を途上国で今も息づく現場から学ぶ。
(4)近代化に伴うコミュニティの衰退と現代社会の諸問題
コミュニティの衰退はいかにして起こったか。現代社会の諸問題との関連を考える。
第二部「新たなコミュニティ再生〜�@実例編〜」
(5)日本における地縁組織の現状と新たな動き
町内会や自治会で、地域の課題解決に向けて新たな動きが生まれている事例を見る。
(6)日本におけるNPOの興隆と地域社会での意味
1990年代から急速に伸びたNPOの地域社会での役割を神戸等の具体例から見ていく。
(7)地域づくり活動における住民・行政・NPOの協働
行政と住民・NPOの協働は地域づくりに欠かせない要素であり、その具体事例を学ぶ。
(8)途上国におけるコミュニティ主導の開発
途上国でもコミュニティの主体性を重視した活動が広がりつつあり、その事例を紹介する。
第三部「新たなコミュニティ再生〜�A実践編〜」
(9)ファシリテーション論�@
コミュニティに関わる外部者の役割が考えるべき「ファシリテーション」について考える。
(10)ファシリテーション論�A
ファシリテーションの実践についてその手法を紹介する。
(11)地元学の手法
外部者とコミュニティの協働により地域資源を掘り起こし活用する手法「地元学」を学ぶ。
(12)NPOのマネージメント
コミュニティ再生で主要な役割を果たしている非営利民間組織の運営のあり方を考える。
(13)Partnership BuildingとCBIA〜途上国における実践〜
途上国のコミュニティで住民主体の開発を実現するための基本的な考え方や手法を検討する。
(14)まとめ
「コミュニティ」と「外部者の役割」についてまとめ、現場の実践と繋げる。