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●「教養」をコアに開かれた大学院へ
「教養デザイン」―こんな名を冠した大学院は、おそらくわが国においては例がないと思います。大学教育の役割を「教養教育」と「専門教育」の両面でとらえるとすれば、大学院が担うべきは当然「専門教育」の方であると、一般的には考えられているからです。
しかし私たちは、こうした大学教育のあり方自体、とりわけ、教養教育の位置づけと内容を、改めて見直す必要があるのではないかと考えたのです。
大学の学部教育においては、教養課程・専門課程の区別が撤廃されて以来、カリキュラムの中でいわゆる一般教養科目が減らされ、教養教育の比重が小さくなる傾向が顕著になっています。その一方で、多大な時間を割かれる就職活動が、3年次後期から始まるという形がほぼ慣例化したため、専門教育についても十分には行えていないというのが、学部教育の実情と言わざるをえません。
そこで、学部教育ではむしろ教養教育に力を注ぎ、専門教育は大学院に任せようという考えに辿り着いたわけです。法科大学院などの専門職大学院は、そうした考え方に基づくものとも言えるでしょう。
ではその場合、学部ではどのような内容の教養教育を行えばよいのか。現代に必要とされる教養教育とは何か。それを構想するのが、本研究科の目的の一つです。
また、わが国の大学は、基本的に、小・中・高の延長の「学校」として存在しています。しかし大学は本来、もっと社会に、特に地域に向かって開かれた、いわば市民のための「知のセンター」としての役割も果たすべきものではないでしょうか。
実際、諸外国のキャンパスでは、年齢を問わず学びたい者がともに学ぶ、日本とはかなり異なる光景が、ごく当たり前に見られます。そして、わが国でも、社会で一定の経験をつんだ方が、もう一度大学で学び直したいという需要は増えつつあります。もちろん、その中には、仕事に必要な資格や技術を身につけてキャリアアップを目指したいという方もいます。しかし、一度仕事を離れて自分の生き方を見つめなおしてみたい、あるいは、仕事を引退した後に、その歩んできた道を振り返り、その意義を確認したいといったシニア世代の方も少なくない。特に、「団塊の世代」が定年を迎えるこれからは、このような「学び」を求める方は増えていくのではないでしょうか。
そうした方たちを受け入れる役割も、これからの大学院は担っていくことになるでしょう。それは、専門性を追求する従来の大学院とは違った学際的、総合的な知を探求するという性格を持ったものとなるはずです。
本研究科は、このような大学院のさきがけとなることも目指しています。
●幅広い知識とともに人間関係の基礎となる能力を
「教養」のベースが、幅広い知識であることは言うまでもありません。ただ、そこで求められる知識の中身は、時代とともに変化します。グローバル化が進み、世界の紛争や平和の問題、エネルギーや環境の問題などを、私たち一人一人が考えなければならない現代において、私たちが備えるべき知識は何か。教養のデザインは、そこから出発しなければなりません。
本研究科は、「人間性とその適正な環境」をテーマとして、哲学・倫理学などの人文科学、法学・政治学などの社会科学、環境科学・生命科学などの自然科学の各分野から専門家を集めて教員とし、カリキュラムを組みました。学生は、次の3つのコースのうち、1つを選択することになります。
まず「倫理・哲学・宗教領域研究コース」。ここでは、西洋、アジア、日本を含む現代社会を読み解く鍵となる倫理、哲学、宗教についての基礎的な諸問題を考えていきます。また、生命や環境をめぐる応用的倫理をも問題にします。
次に「文化領域研究コース」。共生社会における異文化理解ということを中心に研究します。人間性の発現として文化をとらえ、マイノリティの文化にも焦点をあて、言語の文化性、あるいは文化マネージメントといった分野にも取り組んでいきます。
最後に「平和・環境領域研究コース」。戦争と平和の問題、自然との共生の問題を中心に置きます。文化の衝突の問題、人間と広い意味での環境との関わりの問題などを、幅広い視点で研究していきます。
これらのコースは、それぞれ「現代倫理学」「文化論」「地球公共論」をコア科目とします。そのうえで、他の領域研究コースの科目も取り込んだきわめて学際的な研究が行なえるよう設計されています。
こうした学びを通して学生の皆さんに身につけていただきたいのは、私たちが提供する知識だけではありません。他者の考えを読み解き、自分の考えを構築する「論理的思考力」、単なる会話能力ではなく自他の文化の違いを把握した上での「コミュニケーション能力」、そして、何より大切なのは、相手の立場を理解し、思いやる「イマジネーション能力」――私たちが「教養」の核になると考えているこれらの能力も、あわせて養っていただきたいと考えています。これらの能力は、いかなる職業や活動領域においても、成功のために不可欠なカギであると信じています。
学生の皆さん、そして社会人の皆さん、それぞれの新しい生き方をデザインするために、是非この新しいタイプの大学院での学びを活用してください。
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