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2018年度 入学式 学長告辞「見る前に跳べ」

2018年度 入学式 学長告辞「見る前に跳べ」
新入生のみなさん、入学おめでとうございます。そして、ここにお集まりのご家族や関係者の皆さん、本日は誠におめでとうございます。君たちは、明治大学に入学することによって、これまでとは異なる世界への一歩を踏み出すことになります。高校生と圧倒的に異なるのは、ここでの知識と経験の多様性、そして量です。それはキャンパスから溢れる程に存在します。

君たちは、それぞれの学部に所属していますが、明治大学という10学部・16研究科を擁する大学のメンバーでもあります。全ての学部のカリキュラムは、他学部履修という手段によってあまねく提供され、所属する学部以外の講義にも出席することができます。そこで自身の学部と重なり合う他学部の知識を求めてみれば、知識の多様さに気づくことになるでしょう。一方、全く異なるものもあります。それは探検のようなものであり、足とコンパスを頼りにして、未知の領域に挑戦することもできます。最も歴史が古い法学部から最も新しい総合数理学部まで、この明治大学全体を、君たち自身のフィールドにして、四年間を計画してみてください。

シラバスは楽しい知識のカタログでもあります。明治大学のホームページでは、全学部・全研究科のシラバスを見ることができます。あれかこれか、ではなく、あれもこれも、なんでも見てみればいい。そこには、新しい知識の結合が潜んでいるかもしれない。連想ゲームのように、知識の脈絡を追ってみる楽しさもきっとあります。

その見本は私自身です。私は明治大学法学部を卒業して法学部の教員として法哲学という領域を教えてきました。その専門の本も何冊か出しました。同時に、私は日本の伝統芸能である能楽の本も出しています。江戸元禄時代の歌舞伎の本も出しました。『ダンスの誘惑』という本も出しました。ある時期はバレエ・ダンスの評論家でもありました。生け花の本も出しています。その多くは文庫本になったので、多くの人に読んでもらいました。しかし私はそれぞれの専門家ではありません。ロラン・バルトという現代フランスの思想家はこう言いました。「ただ始めることが楽しい」。私もそうです。もしそこに共通するものがあるとしたら、これまでの専門家が出来なかったことをやったことです。領域を超えた共通の文化の息吹に忠実であっただけです。それは君たちにも出来ます。自分の所属に縛られるのではなく、自由に跳べばいいのです。

さらに、海外の大学もあります。明治大学が協定を締結している大学は、世界中に存在します。日本の大学としては、トップクラスの留学助成金を準備しています。この助成金を使って、海外の大学に行けば、君たちは、まさしくこの世界の豊かさを抱くことができます。

W・H・オーデンという詩人は「見る前に跳べ」という詩でこう言いました。「The Sense of danger」。危険への感覚は常に磨かなければいけない。ここから見れば、道は緩やかに見えても、実際は急で険しいかもしれない。だから、注意深く好きなだけ見続けていてもいい。しかし、いつかは飛ばなければならない。そうであれば 、「Leap before you look」。見る前に跳べ。まず跳んでみることだ。そうオーデンは言いました。

私は昨年5月にニューヨークにある国連本部を訪問してアントニオ・グテーレス国連事務総長と面談しました。グテーレス事務総長はかつて国連難民高等弁務官として難民問題に尽力されていました。本学は同氏の社会的実績や世界平和に向けた人道的課題解決への多大なる貢献を高く評価して、国連難民高等弁務官時代の2014年に名誉博士号を贈呈しました。そして本学は今もUNHCRとの協定に基づき、難民学生の受け入れを続けています。このような経緯もあり、国連事務総長就任に際し、ニューヨークを訪れたのです。国連本部では明治大学政治経済学部を卒業してオクスフォード大学大学院に進み、現在はUNDPの職員として活躍している岡本健さんとも会う機会に恵まれました。

また、明治大学と協定を結んでいるニューヨーク州立大学ニューパルツ校を訪問しました。そこには国際日本学部から留学していた二人の女子学生がいました。坂井仁美さんと百合彩香さんです。彼女たちとも会いました。最初は慣れるまでは大変だったと聞きましたが、面会をした際には、はつらつとしていて、教員ともファーストネームで呼び合う姿を見て、すごいなと感心しました。それと同時に羨ましくもあった。私が学生だった頃は、交換留学などほとんどなく、海外に出ていく機会はなかなかありませんでした。今では、ニューヨークであろうと、カリフォルニアだろうと、パリでも、世界のどこへでも、明治大学の学生として留学することができます。

「見る前に跳べ」。オーデンが言った言葉はまさにその通りです。世界は連続体としてあるのではありません。モザイクのように切れ目を持ち、断片として繋がっています。他の国や組織に入ることは、まさしく、このモザイクの間の亀裂を跳び越えていくことです。生きることはこの跳ぶことの連続です。

アーヴィング・ゴッフマンというアメリカの社会学者も、オーデンと同じように、「Leaping into」跳び入ることこそが私たちの日常であると言いました。違う世界に跳び入る。君たち自身は、今まさに大学という組織に跳び入ってきたのです。そこには未体験の新しいことばかりがあるでしょう。そうであるからこそ、さらに新しいことを求めて、見る前に跳べ。その言葉を贈りたい。異なる言語、異なる文化へと跳び込んでいけば、そこには新しい世界が、君たちが経験したことのない世界が開けている。それは、おそらくこの四年間の大学生活の中でしかできない、ちょっとした冒険です。

勇気はそこでこそ意味を持ちます。ちょっと外れるだけで、世界は違って見えます。世界の多様性を感じることができるのです。その世界体験を明治大学は全面的に応援します。これからの大学生活を自由な風のなかで楽しみ、時として寄り道をしてみてください。そして、世界の課題について考えてみることが、大きな感動につながることでしょう。「見る前に跳べ」。このオーデンの言葉を君たちへの応援の言葉にして私の告辞とします。君たちの入学を歓迎します。


                                           明治大学長 土屋恵一郎

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