2005年度 明治大学人文科学研究所「公開文化講座 熊野」

-総合テーマ- 『熊野—その信仰と文学』
明治大学人文科学研究所
公開文化講座開催委員会
 

  明治大学人文科学研究所は,日ごろより全国各地の方々と本学研究者との密接な連携のもと,それぞれの地域の歴史・文化を改めて研究の場に吸収することにつとめるとともに,その研究成果をまた地域に向けて開放しつつ,地域と大学との双方向的な知の交流をすすめて参りました。その一環として,毎年各地で公開文化講座を開催,回を重ねる毎に,テーマもその地域に相応しいものが設定され,初期の目的も十分達成されつつあると,いささか自負しております。

 熊野と明治大学との関係はさほど長いものではありませんが,2003年度の本研究所の公開講座を和歌山県新宮市で開いてから急速に接近し,各地との連携のもと,2004年4月には明治大学に国際熊野学研究所が設置され,本年3月には熊野の各地域および全国の大学の研究者の熱い協力を得て,国際熊野学会が産声を上げました。既に,8月には田辺市本宮町で第一回全国大会が,9月には河口湖で第一回東京研究例会が開催され,昨今のいささか軽佻浮薄な世界遺産ブームとはまた別の次元に,真に熊野に熱き想いを抱く者たちの人間的出会いの場が急速に拓かれつつあります。

 さて,今回は上記標題のもと,圭室文雄明治大学教授が,主として高野山を含む熊野の信仰の方面から,鶴﨑裕雄帝塚山学院大学名誉教授が,主として熊野にかかわる説話文学の観点から,それぞれ熊野の本質に迫る企画であります。両教授の長年にわたる豊かな研究成果を通して,神と自然と人間,そして死者と生者と精霊が往古の物語を交わし合う,山人,里人そして海人たちが混然と培ってきた古人の智慧に耳を傾けたいと思います。

 熊野,それは日本の一部ではなく,日本こそ熊野の一部であるといっても過言ではありません。今の日本は所詮近代の産物,その原理もただ効率と利潤にすぎません。今こそ私たちは,時空を超えた熊野に基軸を据えて,ますます速度を加える社会と人間の平板化・卑小化に歯止めをかけねばなりません。

 今回の文化講座にも,できるだけ多くの方々にご参加いただき,またそれぞれご自身の経験と人生観に照らしてお聞きいただき,かつそこから私たちに豊かなフィードバックがいただける講座でありたいと,私たちは切に願っている次第であります。
(明治大学法学部教授 金山秋男 記)

日時: 2005年11月5日(土)午後1時30分~4時40分
会場: 鵜殿村生涯学習センター まなびの郷「きらめきホール」
聴講: 無料(事前の申込は必要ありません。直接会場にお越しください。
主催: 明治大学人文科学研究所
共催: 東紀州地域活性化事業推進協議会,みえ熊野学研究会
後援: 三重県,鵜殿村,鵜殿村教育委員会,熊野市,熊野市教育委員会,紀宝町,紀宝町教育委員会,御浜町,御浜町教育委員会,国際熊野学会,吉野熊野新聞社,南紀新報社,南紀州新聞社,紀南新聞社,伊勢文化舎
お問合せ: 明治大学人文科学研究所
TEL 03-3296-4135  FAX 03-3296-4359


江戸時代遊行上人の熊野参詣

明治大学商学部教授 圭室 文雄
 司会:明治大学法学部教授 金山 秋男
 

 遊行上人といえば一般的には時宗の開祖一遍のことと考えられていますが、実は時宗遊行派の歴代住職を遊行上人と呼んでいます。本山は神奈川県藤沢市清浄光寺(通称遊行寺)です。

 『一遍聖絵』を見ますと、一遍は文永11年(1274)熊野本宮で参籠、念仏賦算の神託を受けこれを時宗開宗の時としています。

 ところで歴代遊行上人は全国廻国の途次、宗祖一遍の信仰を追体験するため熊野に立ち寄ることにしています。勿論全国各地にある熊野の末社へも必ず参詣しています。また遊行廻国の折は行列の先頭に熊野の神輿を担ぎ歩きます。遊行上人と熊野は極めて密接なかかわりがあったと思われます。

 今回は江戸時代の五人の遊行上人(49代一法・52代一海・53代尊如・54 代尊祐・56代傾心)の旅日記である『遊行日鑑』の記事を中心にして遊行上人の熊野参詣の様子を探ってみたいと思います。

 熊野への参詣コースはいずれの遊行上人も和歌山城下の浄土宗安養寺から出発し、海南市藤白峠~糸我~湯浅~鹿ケ瀬峠~御坊市小松原~切目~岩代~田辺~三栖~岩田~滝尻~高原~近露~道場川~発心門~伏拝~本宮~新宮~那智、という熊野街道をたどって往復二週間の旅をしています。

 ここでは熊野参詣の意義、和歌山藩の保護の実態、熊野三山で結縁した場所、道中での宗教活動などについて紹介し、熊野と時宗遊行上人との繋がりを検討してみたいと思います。

熊野に見る文学の変遷

帝塚山学院大学名誉教授 鶴﨑 裕雄
司会:明治大学法学部教授 林 雅彦
 
I 三重県北牟婁郡・南牟婁郡を含め,紀伊国の政治・経済・文化には三つの地域の特徴がある。その三つの地域とは(1)熊野,(2)紀ノ川流域,(3)高野山である。その内,熊野には恵まれた自然があり,一方,神秘性が存在する。恵まれた自然と神秘性の文学,文学史の流れに沿って,熊野の文学を駆け足で覗き,熊野詣の代表的な説話,安珍と清姫の道成寺物語を取り上げてみよう。

II 熊野文学の流れ  
1『古事記』『日本書紀』
2『熊野御幸記』『風雅和歌集』(和泉式部の歌)
3『平家物語』『一遍聖絵』
4『道成寺縁起』『をぐり』
5『傾城反魂香』『雨月物語』
6 佐藤春夫と中上健次

III 道成寺物の変遷—『日本法華経験記』~『京鹿子娘道成寺』  『日本法華経験記』は平安時代の長久年間(1040~44)に成立した法華経の功徳を説いた説話集,『京鹿子娘道成寺』は江戸時代の宝暦3年(1753)初演の長唄の歌舞伎踊,二つは全く違った作品のようだが,同じ道成寺物語による作品である。ビデオを用いて道成寺物語の変遷を辿ってみたい。 Ⅳ 熊野に見る文学の変遷を通して文学とは何かを考えてみよう。

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