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布施辰治らの功績に改めて脚光 ソウル放送の取材番組が韓国内で高い評価

2011年10月12日、韓国プレスセンターで行われた授賞式で韓国記者協会『今月の記者賞』を授賞するイ・ビョンテ氏(右)

本学出身の人権派弁護士・布施辰治(1880-1953)をはじめ、朝鮮独立に命を捧げた3人の日本人にスポットを当てた韓国・ソウル放送制作のドキュメンタリー番組、『朝鮮独立の隠れた主役、日本人独立闘士たち』が2011年8月15日に同国内で放送された。同番組は同年10月、韓国放送通信審議委員会の『今月の良い番組賞』および韓国記者協会の『今月の記者賞』(ともに8月分)をそれぞれ受賞した。同番組の制作に当たっては、本学副学長(和泉キャンパス担当)の山泉進・法学部教授と、明治大学図書館が多大な取材協力を行っている。

韓国記者協会の『今月の記者賞』は、放送・新聞・雑誌で記者らが報道・放送した内容のうち、社会的に意義があると判断されたものを、有識者や専門家で構成される審査委員らが審査し授与する賞。韓国放送通信審議委員会は、放送界の有識者、学界、市民団体関係者で構成され、放送と通信の真贋を審議・評価することで、品質の高い放送制作を奨励する韓国政府の下部機関。『今月の良い番組賞』受賞者は希少であり、栄誉とされる。
 
番組を制作した韓国ソウル放送報道本部のイ・ビョンテ報道制作部次長は、「今回の受賞は布施辰治らに代わって受賞した賞だととらえている。加えて、彼らの正義の人生を高く評価している多くの日本人に授与された賞でもあると思う。このドキュメンタリーによって、大変な時代に命をかけて弱者の味方をし、正義を貫き通した3人の日本人がいたという事実を知り、多くの韓国人が衝撃と感銘を受けた。100年前の当時、そして2011年の現在も、正義を追求する数多くの日本人が存在する事実を韓国内に知らせることができた」としている。

イ・ビョンテ氏はまた、「大学における価値判断の基準は、自己にとって有利か不利かではなく、正しいか間違っているかであると思う」とのメッセージとともに、「武力で朝鮮を植民地化した祖国日本に対し、命をかけて抵抗しながら朝鮮独立を叫んだ布施辰治ら日本人独立闘士、そして、彼らの犠牲精神を高く評価している今日の善良な日本人と、そんな日本人に感謝している多くの韓国人が、こじれにこじれた現在の日韓関係を修復する糸口になることを心より願う」とのコメントを寄せている。

布施 辰治(1880-1953)

宮城県石巻市出身。明治法律学校(現・明治大学)が輩出した人権派弁護士。常に社会的弱者の側に立ち、人権擁護にその生涯を捧げた。布施の弁護活動は国内だけでなく朝鮮・台湾にまで及んでおり、戦前戦後の韓国人に対する弁護士としての活動により、2004年には日本人として初めて大韓民国政府より「建国勲章」を受章している。