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論壇 大学を取り巻く環境の変化と課題 経営企画担当常勤理事 橋口 隆二

2011年3月の東日本大震災は、本学の学事日程、施設整備完成日程等あらゆる行事遂行に大幅な変更を余儀なくした。あれから1年余、未だに余震は続くも、大学は落ち着きを取り戻すとともに正常化へ向け進んでいる。

こうした中本学は、2011年に創立130年を迎へ150周年を見据え「世界へ 『個』を強め、世界をつなぎ、未来へ—」のコンセプトを掲げ、2011年度に策定した「長期ビジョン(将来像)」の具体化に向け2012年度の事業を展開している。この事業計画の実行にあたっては、大学を取り巻く経営環境の変化に対応した策を講じる必要がある。

1990年代に入ってから、規制緩和や競争主導の進行により、学生の確保、情報化そして国際化と様々な経営課題に対応しなければならなくなった。

第一の課題は、少子化による学生確保の問題だ。大学入学の年令である18才人口は、1960年代の200~250万人から、現在は120万人に半減した。この状態にもかかわらず、多くの大学が学生をどうにか確保出来たのは、大学への進学率の上昇に外ならない。しかし、この伸びも現在は50パーセントを超え、これ以上は期待出来ない状況にある。幸いにして本学は、早くよりあらゆる入学試験に対し改革を断行した。一方で時代が要請するカリキュラムの編成、魅力ある施設等を整備した。結果、入試志願者数全国1位を3年連続で記録する事が出来た。これからも続く少子化対策こそが、教育機関としての経営を安定させる事になる。

第二の課題は、教育内容の質的変化への対処だ。大学の数は、短大からのシフトもあり、国公私立合わせて2010年度に778校を数え最近10年間で約130校増えた。大学生の数も290万人弱となり、講義の方法、内容も以前の少数精鋭主義から変えざるを得なくなって来ている。この流れに沿って本学は、学部・学科の編成と新設を行った。情報コミュニケーション学部、国際日本学部、そしてこの度新設する総合数理学部である。今後も機を見て速やかに対処していく。

第三の課題は、国際化、国際競争だ。米国のみならず欧州の数多くの国が財政に苦しむ中、その影響は日本の大学にも及んでいる。公的助成が削減され、自立を求める方向に舵が切られた。そういった中、アジア地域では、グローバル化にともなう各国大学による留学生のし烈な獲得競争が展開されている。本学も国際化には、積極的に取り組んでおり、文部科学省が推進する「国際化拠点整備事業」としての13大学の一校に採択され、国際化へ向けたハードおよびソフト両面の整備を進め、現在留学生数は1200人程を擁するとともに、世界37カ国・182大学と協定を締結している。

国策に目を向ければ、行財政改革の流れの中で文部科学省は、大学(大学院)設置基準をもとにした大学の設置や経営の自由度を広めた。大学間競争はさらに苛烈なものになっていくだろう。これまでも大学を取り巻く環境変化に本学は、確実かつ着実に対応してきた。これからも、アンテナを廻らし、情報を早く適確にキャッチし、対処することが勝利に繋がると思料する。