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明治大学リバティブックス 新刊紹介

本学の特色ある研究に基づいて、広く読まれる教養書として、明治大学出版会から刊行される『明治大学リバティブックス』。今月は、カナダ・ケベック研究の第一人者である政治経済学部の小畑精和教授の新刊を紹介する。

このたび、明治大学出版会は、明治大学リバティブックスの4冊目として、小畑精和著『カナダ文化万華鏡  『赤毛のアン』からシルク・ドゥ・ソレイユへ』を刊行いたしました。

多文化主義を掲げる国、カナダから発信される、小説からポピュラー音楽、舞台芸術からアニメーションに至るまでの文化・芸術を初めて包括的に捉えた注目の一冊です。

本学政治経済学部の小畑教授は、これまで『ケベック文学研究 フランス系カナダ文学の変容』(御茶の水書房)などの著書でカナダ/ケベック研究を進めてきましたが、今回はその集大成ともいえる内容になっています。

あなたは『赤毛のアン』がカナダのお話だとお気づきでしたか? また、セリーヌ・ディオンやジョニ・ミッチェル、さらには『タイタニック』の監督、ジェイムズ・キャメロンがカナダ出身であることをご存じでしたか? もちろんこうした素晴らしい作品や才能がカナダから生まれたというだけなら、さして珍しい話でもありません。しかし、それぞれにカナダの風土が大きく影響しているとしたらどうでしょう。

カナダの文化・芸術に溢れているのは、アメリカの「フロンティア精神」とも、イギリスの「島意識」とも違う、厳しい自然と闘い、生き抜いてきた「サバイバル精神」です。それはまた、内面的・文化的な軋轢という側面ももっています。この「サバイバル」というコンセプトは、具体的な作品の上でどう表現されてきたのでしょうか。

もうひとつ、カナダの文化を語る上で見逃せないのは、「多文化主義」です。カナダには、イギリス語系、フランス語系、先住民のイヌイット、それに日系人など、さまざまな民族、言語、文化が同居しています。これらをまとめて「カナダ人」というひとつのカテゴリーにほうりこむのは、さすがに無理。文化の本質は、棲み分けと交流にありますが、ではそれはどんな領域で、どのように行われているのでしょうか。

本書は、主にそのふたつの観点から、カナダにおける文化と芸術を紹介・分析します。扱うジャンルは、小説、音楽、映画、アニメーション、舞台芸術と多岐にわたり、どんな方のご関心にもお応えできる内容です。

「いくつもの見方を受け入れ、現実を見つめ、そこからイメージを形成し、また、そのイメージを現実と照らし合わせる、その絶えざる行き来を通して、現実はより豊かな姿をわれわれにみせてくれる」という本書の結びのことばは、読者であるわたしたちの世界観をも豊かにしてくれることでしょう。

(明治大学出版会編集部)

明治大学リバティブックス カナダ文化万華鏡——『赤毛のアン』からシルク・ドゥ・ソレイユへ

小畑精和 著 四六判・上製・432ページ
定価:3,465円 (本体3,300円+税)
ISBN 978-4-906811-04-5
2013年4月刊行