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明大の特許「サンゴ砂礫農法」利用新地町に高糖度トマト栽培の植物工場

世界中から集めた「サンゴ砂礫」サンプルを前に、「儲かる農業に役立つ革新的な技術」と胸を張る中林准教授(研究室で)

このたび、農学部の中林和重准教授が発明した「サンゴ砂礫農法」を活用した、高糖度トマトを大規模に栽培する植物工場が、福島県新地町に完成する。

これは、復興庁と経済産業省による本年度の中小企業経営支援等対策費補助金「先端農業産業化システム実証事業」に採択されたもので、明治大学研究活用知財本部を通じて栽培技術を提供する本学の他に、清水建設(本社・東京都)、栽培を担う新地町の農業法人である新地アグリグリーン、セブン&アイ・ホールディングス傘下で東北を地盤とする流通大手のヨークベニマル(本社・福島県)が連携して取り組むプロジェクトだ。

計画では、10月中旬までに、新地アグリグリーンの農作地内に約30㌃(2880㎡)規模の太陽光利用型の植物工場が竣工し、高糖度トマトの栽培をスタート。通常栽培の3割増となる年間収量30~35㌧を見込む。収穫・出荷されるのは、約2カ月後の年明け早々からで、福島県内のヨークベニマル各店で販売する。

中林准教授は「ミニトマトは20年間の栽培実績もあり、自信を持って、高糖度で高収量をあげる革新的な農法として勧めることができる技術」と胸を張る。

サンゴ砂礫農法は、化石化した天然のサンゴ砂と苦土石灰、ケイ砂からなる天然混合培地で、土壌を用いずに植物栽培する方法。土壌を用いないことで、害虫や病原菌の発生率を大幅に減少させることができる上、水分の管理も容易で、連作障害もなく長期間使用できることが特徴。『有機肥料を用いた植物の栽培方法(特許第4049370号)』として本学が特許を保有している。

関係者とともに新地町の加藤町長へ事業報告

新地アグリグリーンの河内取締役施設部長からミニトマト栽培の説明を受ける伊藤副学長(右)ら関係者一同

中林准教授と伊藤光副学長(総合政策担当)は9月18日、同プロジェクトで連携する清水建設の山本亘エンジニアリング事業本部長、内田純上席エンジニア、ヨークベニマルの脇坂雄二商品企画開発部長とともに、新地アグリグリーンの赤坂保信代表取締役、河内英雄取締役施設部長を訪ね、整備が進む高糖度トマトの植物工場を視察した。   

新地アグリグリーンは、東日本大震災により農作地の4分の1に相当する1.5㌶(15000㎡)のハウスが倒壊して未だ復旧できていない状態。復興に向け経営強化策を模索する中で、清水建設の仲立ちで、本学の「サンゴ砂礫農法」の採用を決定した。

この農法を採用した理由について新地アグリグリーンの河内部長は、「黒川農場で偶然にも我が社でも扱っている品種の『イエローミニトマト』をサンゴ砂礫農法で作っていた。比較しやすかったこともあるが、その時は糖度の落ちる夏場にもかかわらず、糖度は9度と高く、実のつき方も申し分なかった。さまざまな提案を受けていたが、明大は、理論だけではなく、実用的な規模で栽培していたことが決め手だった」と説明。さらに、「学生たちにこのレベルの栽培ができるならば、われわれがやれば、もっと高品質で美味しいトマトを作ることができる」と述べ、プロ農業家としての自信をみなぎらせていた。

視察を終えた一行は、新地アグリグリーンの関係者とともに、新地町役場に加藤憲郎町長を表敬訪問し、この事業についての現状報告を行った。

報告会では、冒頭、赤坂代表取締役があいさつし、内田上席エンジニアが事業概要を説明した。続いて伊藤副学長が「本学の研究が役立ち、新地町が再建していくことを嬉しく思う」とあいさつし、本学と新地町が2012年1月に締結した協定に基づく学生たちのボランティア活動も含め、震災復興支援の一環として協力していく考えを示した。

ヨークベニマルの脇坂商品企画開発部長は、「県内71店舗の内、66店が稼働できるようになった。お客さまに美味しいトマトを届けられるよう頑張っていく」と復興に向けて前進していく決意を語った。

報告を受けて加藤町長は、「同プロジェクトが国の復興事業として採択されたことは喜ばしい。ぜひ、農業の復興としても、儲かる事業にしてもらいたい」との期待に続けて、「2020年の東京オリンピックが開催される際には、来日する外国の皆さんに、日本を代表するブランドとして食べていただけるよう全面的に支援していく」と力強い言葉で結んだ。