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『監査意見形成の構造と分析』長吉 眞一 著(中央経済社、4,000円)



本書は、現代のリスクアプローチに基づいた監査実務を説明する論理モデル式からもたらされる監査上の重要な概念を、理論的に解明したものである。

1章から9章においては、著者の長年の実務経験に基づいて、実際の監査業務のプロセスが詳しく説明されており、これまで、リスクアプローチ監査実務において重要視されてきたものの、ほとんど理論的な考察がなされてこなかった監査計画の理論的意義を再構築し、監査要点、監査証拠、意見表明の基礎といった、監査意見形成に欠かせない概念の相互関係が明らかにされている。10章、11章において、監査人が監査意見をどのように形成していくのかを理論的に解明し、これまで分析することが非常に困難であった監査判断という概念が実務の参考になる形で分析されている。

補章では、これまでの考察から監査業務が変容していくであろう方向も示されており、監査の現場でどのような判断を下すか苦心している公認会計士はもとより、監査を受ける立場にある経営者や経理担当者にも是非ご一読をお薦めしたい一冊である。

小俣光文・経営学部教授(著者は会計専門職研究科教授)