本棚『図説 ベルギー 美術と歴史の旅』森 洋子 編著(河出書房新社、1,850円+税)



近来、「ベルギー」の表題をもつ研究書やガイドブックが多数出版されている。注目されるのは、ラテンとゲルマンが交錯し、複数の言語地域からなる「ベルギー」という国のアイデンティティである。「ベルギー人」としての帰属認識と、その集団における他者との関係から生じた歴史的事象をめぐる「ベルギー学」の発展が、ここでは求められているのである。

編著者はベルギーの美術史研究を、編集協力者の河原温・首都大学東京教授は中・近世ベルギーの都市史研究を長く牽引してきた。本書は、美術史を赤い糸として古代から近代に至るベルギー史を通観するものであるが、我が国のみならず、ベルギーの研究者による書き下ろし論文を取り入れ、写真や図版も新しい研究成果に依拠しており、まさに現在の「ベルギー学」の展開を呈示していると言える。

美術において比類ない発展をみせたフランドル、ブラバントを超えて、ワロン地域をも射程にいれての手堅い記述は、今後ベルギー史への多様な分野からの関心を湧き立たせることとなろう。

齋藤 絅子・名誉教授(著者も名誉教授)

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