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リバティアカデミー 自然界の謎を探る——「元素の誕生と宇宙」

理研客員主管研究員・小川氏が3話構成で講演

会場からの熱心な質問に答える小川氏

リバティアカデミーと地域産学連携研究センターは5月23日、オープン講座「元素の誕生と宇宙」を生田キャンパス・地域産学連携研究センターで開催した。水素や鉄など、身の回りに存在する元素の誕生した経緯が、宇宙や星の始まりと深く関係していることが解説され、140人の受講者が宇宙と元素の謎を解明する物理学の世界に触れた。

理化学研究所客員主管研究員の小川建吾氏による講演は3話構成で行われ、第1話は「宇宙最初の3分間」がテーマ。宇宙の始まりとされる138億年前のビッグバンから3分後に、陽子と中性子と呼ばれる原子核を構成する粒子が結合を開始。その38万年後にはこれらの粒子が電子と結合し、水素原子とヘリウム原子が誕生していたことが説明された。

続く第2話では、第1話の内容を受けて「星が輝く理由」が紹介された。第1話で誕生した水素原子が、その後長い時間をかけて少しずつ集まり塊に凝縮。塊の内部では水素原子同士が万有引力でさらに圧縮されて、ヘリウムが生成される核反応が起こる。この核反応の副産物として、光と熱のエネルギーやニュートリノと呼ばれる粒子などが生成されており、小川氏は「星の輝きはヘリウム工場から漏れた光」と分かりやすい表現で解説した。

最後の第3話では「これからが本番」として、誕生の経緯が未解明の元素があることが紹介された。炭素や酸素、鉄などは、第2話と同様の仕組みで誕生したのに対し、同じく自然界に存在するウランはこの方法では生成できないことが判明している。小川氏はウラン生成の有力説として、寿命を迎えた星が起こす「超新星爆発」を紹介したが、「完全には解明されておらず、自然界が科学者に突きつけた謎」と、現在も研究が続けられていることを明らかにした。

宇宙の誕生にも及ぶ壮大なスケールの話に参加者の関心は尽きず、会場からは「太陽系の元になった超新星は見つかっている?」「ビッグバンの前の世界は?」「はるか昔の現象なのに年代が特定できるのはなぜ?」などたくさんの質問が寄せられていた。