本棚「フランスの他者—コミュニケーション思想とジェンダー—」木村 信子 著(創英社/三省堂書店、2,500円+税)



2015年4月に刊行された本書は、なかなか刺激的である。ジェンダーの書とも言えるし、歴史の流れを考慮に入れた哲学の書とも言える。また、日仏を柱にした比較文化、あるいは古代から今日までの文明の書などと言ってもいいかもしれない。実に多岐にわたるのだが、何よりそれらを「コミュニケーション」というキーワードで可能性と不可能性を視野に収めて総合するところが独創的。女性や移民といった「他者」の視点もふまえながら。

デリダやコフマンの唱えるテクストの「破れ目」が、今後、ジェンダー問題にポジティヴな可能性をもたらすと主張する点、古事記や高群逸枝を軸にヨーロッパの二項対立とは異なる日本の柔軟なありようの可能性を示唆する点などが、特に木村氏の筆が冴えるところで興味深い。

明治大学・同大学院での講義やゼミナールが、部分的には本書の母体となっているようだが、気配りの詰まったわかり易い文章と構成は、著者の日々の「教育」の現場における気配りや工夫の反映なのだろう。

吉川佳英子・法学部兼任講師(著者は文学部兼任講師)

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