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ズームアップ 第576回「靭帯断裂で臨んだ東日本インカレ」

相撲部 前田 将吾



「どうしても出たい」。6月10日に行われた東日本インカレ、前田将吾(政経4=宿毛)は左膝のケガのため予備登録だった。上位8校が進出できる決勝トーナメントがかかった早大戦。この大一番で力を出せるのは「前田しかいない」(小川清彦総監督)。ケガのリスクもあったが「後輩が出るよりも4年生の自分が」と本人のやる気が買われて急遽起用。前田が土俵に立つ副将戦は1—2の負けが許されない場面だった。一度は土俵際に追い込まれたものの「自分が負けたら終わってしまう」とケガを負っている左足で踏ん張った。上手投げで見事大将戦につなぎ、チームはベスト8に輝いた。

今年3月下旬に流山南高で行われた合宿で、左膝前十字靭帯を断裂。慣れない松葉づえの生活を送り、体重は115キロから10キロ減。復帰は早くても半年要すると医師から告げられ「最後の11月のインカレだけ出られれば」と考えていた。

東日本インカレにもメンバー登録しないつもりだった。ケガで万全な状態ではないため、地元の高知で教育実習の予定だった。しかし小川総監督から「4年生だからいてほしい」と一言。教育実習の日程をずらし「学生最後の1年、やるしかない」。相撲人生12年間への思いと闘志がみなぎった。

相撲で学んだ精神面や礼を伝えたい。将来は、中学校教員になって相撲部を作りたいと語る前田。「相撲は心が強くないと戦えない」。ケガを負いながらも奮闘した前田の姿は、チームのためを思い、心技体が三位一体となった瞬間だった。心技体の体現者が未来の力士の卵を育てあげるだろう。

(まえだ・しょうご 政経4 宿毛 175cm・115kg)
文/臼井 美理亜(政経3) 写真/高橋 昇吾(営2)