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「長期を見据えた入試戦略を」

副学長(入試担当) 加藤 久和

明治大学は、2023年度入試において一般選抜の志願者数が10万人を超えるなど多くの受験生から選択をしていただいた。これは各学部の努力の成果であり、また入試に携わる教職員の奮闘の賜物であるといえよう。しかしうれしいことばかりではない。10万人を超える志願者を集め続けている背景として、入学者選抜を一般選抜に多く依存しているという点がある。学部によってばらつきはあるものの、大学全体では入学者のうち一般選抜で入学する学生が約70%と、同規模の私立大学の平均である55%程度と比べても高く、その結果、多数の合格者を出すなど高校生にとっては受験しやすい大学となっている。もちろん、このことは財政的にも、また明治大学をPRする面でもメリットとなるが、その一方、多数の合格者を出すことによって相対的に偏差値が低下する懸念や、入学者の確保に関する不確実性も高まる。

長期にわたって18歳人口が減少する将来を見据えると、10万人もの志願者を集め続けることは難しい。偏差値だけが評価基準ではないとすれば、学力重視の単線的な選抜方法だけではなく、多様な受け入れ方法を用意して優秀な人材を確保する方策が欠かせない。これには入試形態には一般選抜のほか、付属校推薦、指定校推薦、総合型選抜などがあるが、一般選抜以外の入学者を増やすことが必要となる。このうち、総合型選抜は学力以外の学生の能力が評価できるなどの利点はあるが、試験実施の負担や客観的で公正な合否基準の維持などの課題もあり、さらには合格者が他大学に入学する可能性もあるなど難しい面も多い。付属校に関しても、2029年度に日本学園からの受け入れが始まるため、すぐに新たな付属校を、というわけにはいかない。そうなると、主たるターゲットは指定校推薦となる。指定校推薦についてはすでに各学部においてさまざまな努力がなされており、新たな指定校となればその位置づけを明確にする必要がある。

2019年に発表した「明治大学グランドデザイン2030」では、出身高校地域を1都3県以外とする入学者の比率を40%に高めるという数値目標が定められた。地方出身の入学者の割合は同規模私立大学と比べても低い(2022年度で23.4%)ことから、特色ある新たな地方指定校の仕組みをつくることが考えられる。また、グランドデザイン2030では海外指定校の充実も強調されており、国際化戦略とも歩調を合わせて拡充していくことが欠かせない。地方指定校についても海外指定校についても課題は多いものの、長期的な明治大学の入試戦略の一環として重要であり、積極的に検討を進めることが必要である。
(政治経済学部教授)