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本棚 「世界俳句2023」 夏石 番矢・世界俳句協会 編(吟遊社、税込1650円)



俳句というと、形式や季語に限定された平和で素敵な芸術のように思われる方もいるかもしれないが、それはその力と可能性を著しく過小評価していることになる。また、良くも悪くも俳句は、例えば第二次世界大戦の戦争俳句に見られるように、その時代から抜け出せないものである。

すでに第19号となるこのシリーズである本書は、世界中の国の人々が詠んだ俳句が集められている。多くの言語で書かれた原文は、英語と日本語に翻訳されており、読者はその考え方の共通性に驚かされることだろう。俳句は必ずしも平和的なものではないが、このコラボレーションは平和に大きく貢献する可能性を持っている。テーマ的には、現在に言及することも多く、健康と平和をテーマにした特集も含まれている。日本語で書かれていないものも多いし、もちろん日本語の形式には合わないかもしれない。それでも、そこには俳句の精神が表れている。伝統とは、まさに灰を拝むことではなく、炎を受け継ぐことである。ここに炎があり、ここに俳句がある。

シェアマン スザンネ・法学部教授(著者は法学部教授)