Go Forward

「DXだけではないMUX」

情報基盤本部長 阿部 直人

本学でも電子決裁による押印リレーの廃止、起案業務の電子化、一部の電子申請などが始まり、遅ればせながらDX(デジタルトランスフォーメーション)が始まった。今後研究費や旅費の電子申請などが実現される。また、専任職員には所属部署のデスクトップ型パソコンに加えノート型パソコンも配付され、学内各所や自宅でも作業ができ、働き方改革の一助となることが期待されている。

情報化の最終的ミッションは単なるDXだけではなく「長期ビジョン・グランドデザインの実現支援」である。2013年に行われた情報部門の外部評価では、「情報に関する戦略を立案し調整を行う組織が存在しない。長期ビジョンを踏まえた投資を行うべき。」という指摘を受けた。これを受けて、2017年に情報化戦略協議会が設立され、2019年度に「明治大学情報化戦略」が理事会に答申された。ここでは10年をかけて情報化が果たすべきビジョンを示し、その実現に向けての施策を掲げている。われわれはこれをMUX(Meiji University Digital Transformation)と呼んでいる。2020年度にはMUXを実行するために6つのプログラム内に20のプロジェクトを立ち上げ活動してきている。これまでは保守期限を迎えるシステムが個々に予算措置を行い、利用者の要望をカスタマイズによって実現してきた。システム間の連携も計画的とは言えず、更新のたびに多額の費用がかかっていた。その反省を踏まえMUXでは、カスタマイズを極力抑えたパッケージの導入を原則とし、クラウド化を進め、システム間の連携、問題点の共有、進捗の確認と管理を行うことでビジョンの実現を目指している。資金計画については複数年にわたる計画を考慮し、情報引当特定資産に繰り入れて将来の支出に備えている。プロジェクトでは情報部門の職員だけでなく、利用部署の職員も多数参画して検討することにより慣習として行ってきた業務を見直すきっかけにもなっている。

すでに業務系システムが実装済みあるいはもうすぐ実装される。ネットワークも整備された。教員や学生に大きな影響がある動画配信システムは今秋から、Oh-o!Meijiシステム(ラーニングマネジメントシステムとポータル)は2025年度に更新される予定である。これにより教職協働と授業の利便性が向上されるであろう。一方でセキュリティ強化も急務であり、すでにメールで導入されている多要素認証を全ての認証において必須とする予定である。

どのような素晴らしいシステムを導入しても、それを生かすも無駄にしてしまうのもわれわれ教員であり、職員の方々である。コロナ禍によって情報化の必要性、重要性が広く認められ、多くのことを経験した。これからはそれを生かす時である。
(理工学部教授)