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「大人の学び直し」への高まる注目

リバティアカデミー長 井田 正道

「大人の学び直し」という言葉をあちこちで目にするようになり、これに関連した「リカレント」や「リスキリング」というカタカナ言葉も定着あるいは定着過程にあるようだ。今日なぜこれほど「大人の学び直し」が注目されているのか。

その理由は大きく分けて2つある。1つは「人生100年時代」という言葉に表される長寿化の進展である。社会保障制度維持の観点からも、できるだけ長く働き続ける環境づくりが求められ、高齢者が仕事を続ける上でのスキル習得機会の増大も課題とされる。その他、健康寿命を延ばす、あるいは生きがい追求、という観点からも生涯学習の推進が求められている。もう1つの理由として、人口減少段階に突入している日本では、経済活動に関する国力維持・向上の観点から個人の生産性を上げる必要性に迫られているという点も指摘できる。これは、DX化の流れの中で政府などがリスキリングを重視している姿勢にも表れている。

生涯学習の内容は多様であるが、大きく2つに分類することも可能である。1つは「人生を豊かにする」学び直しであり、もう1つは「仕事に役立つ」学び直しである。これらいずれにおいても、大学は主要な担い手の1つとなり得ると考えている。大学で学び直しの機会を提供する機関としては、学部、大学院、専門職大学院、生涯学習機関、とさまざまである。生涯学習機関として本学では1999年にリバティアカデミーが発足し、まもなく4半世紀を迎える。リバティアカデミーでは、教養文化講座とビジネス講座という大きな2つの柱を立てており、これらは先の2つの学び直しの分類にほぼ対応している。

日本は先進諸国の中で大学における生涯学習活動が不活発な部類に属しているとするデータにも目を背けることはできない。25歳以上の学士課程への入学者の割合はOECD諸国の平均に比して日本は著しく低い。大学院における社会人入学者の割合は1990年代から2000年代にかけて大きく上昇したものの、近年ではその増加は停滞傾向にある。

リバティアカデミーでは2015年度より女性の仕事復帰やキャリアアップのための「スマートキャリアプログラム」を開始し、根強い支持を得て本年度で9年目を迎えている。また、本年夏からは専門職大学院のグローバル・ビジネス研究科と連携して「プレMBAプログラム」を開始する。申し込み状況などから判断すると反応は上々である。これからも大人の学び直しに関して本学は何ができるか、について問い続け、必要とあれば学内他機関とも連携して多様な「大人の学び直し」のニーズに応えていきたい。
(政治経済学部教授)