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「付属高校と大学人校長」

明治大学付属明治高等学校・中学校 校長 井家上 哲史

本年4月より付属明治高等学校・中学校の校長を拝命した。理工学部の教員が付属校の校長となることは初めてのことである。また、私事ながら、男子校、また猿楽町校舎当時の昭和51年(1976年)にこの明治高校を卒業し、明治大学工学部電気工学科、大学院へと進学、国家公務員上級職試験を経て国立研究機関で研究職に従事した後、縁あって1997年より明治大学に奉職している。歴代の校長は、猿楽町校舎時代は主に明治中高の教諭が務めているが、旧制明治中学校時代を含めて記すと、初代の鵜澤総明(法学部、総長)先生以下、島田正郎(法学部)、清水義汎(商学部)、栗田健(商学部、総長)、吉田善明(法学部)、金子光男(政治経済学部)、安藏伸治(政治経済学部)の各先生方が大学人として明治中高の校長を務めている。

明治高校出身の校長は歴代3名であり、昭和8年旧制明治中学卒の島田正郎先生(法学部教授)在任期間1964-1967年、昭和32年卒の小林正三郎先生(企業人、日立製作所から柏レイソル社長)在任期間2007-2009年、と私である。それぞれの先輩は、卒業生校長として采配を振るわれたことと思うが、理工系大学人であり卒業生である私に課されている役割は何であろうか。

明治高校は2008年の調布校地移転、共学化を経て、金子、安藏の歴代校長は教育改革を行い各学部や理事会が求める人材の育成に取り組んだ。その結果、明治高校から大学へは、英検2級の合格とTOEIC450点以上の取得、高校1年から3年の2学期末までの総点の6割を取得しなくては推薦されないというハードルを設定し、教育の質と量をクリアできる生徒を育てる教育陣と環境を実現し、近年ほぼ全員がクリアしている。明治高校では高校2年まで全員が全科目を必修として学習する。高校3年で文理に初めて分かれるが、文系でも数学をきちんと学び、理系でも国語や社会をきっちりと履修する。いわゆる受験科目に捉われることなく、全ての科目をきっちりと学ぶことが基礎力の育成に役立ち、その後の人生で大きな差をもたらすと考えている。例えば、明治大学に進学後、海外協定校に多数が留学し、毎年複数の学部の卒業生総代や成績優秀者を輩出、公認会計士試験に学部在学中に合格、また、司法試験を突破し法曹界で多くの卒業生が活躍し、国家公務員総合職にも多数が合格している。

理工系大学人としては、文系理系にとらわれず、生徒が時代の変化に即応できる柔軟性を養い、また、データサイエンスの基礎を高校時代に押さえておくことができるICT教育カリキュラムおよび学びの場を充実させることが一つの方向であろう。また、高校と大学の高大連携は既に充実していると考えられるが、さらに若い中学と大学の中大連携ができれば、特に理系センスの醸成に役立つであろう。卒業生の観点では、さまざまな領域で活躍する明治高校同窓会(総明会)のネットワークを在校生および卒業間もない若手卒業生にアクセスしやすい形で提供し、利用できる環境を作ることも重要と考える。(理工学部教授)