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第641回 明大スポーツ新聞部 ズームアップ

「感謝を胸に続く挑戦」レスリング部 太田 匠海

文・写真/井手 満菜(国日2)



太田が競技を始めたのは小学1年生の時だ。「マット運動がうまくなる」と聞いたことからレスリングに出会い、2歳年上の兄と共に地元の道場の門戸をたたいた。レスリングに生かすために中学では道場に通いながら柔道部に入部し、高校は三重県屈指の強豪校・いなべ総合学園高校に進学。1年生ながらにJOCジュニアオリンピック(カデットの部)で準優勝に輝き、幸先のいいスタートを切った。しかし「監督の強い期待に応えられなかった」。度重なるけがとルーキーとしてのプレッシャーに苦悩し、挫折を味わう。そんな太田の転換点となったのは「考え方が変わったこと」。結果が出るまでがむしゃらに取り組んでいた練習スタイルを変え、技がうまくいかない原因や、監督の助言の意図、けがとの向き合い方を考えてレスリングをするようになった。けがの影響で結果を残すことはできなかったものの、挫折を乗り越えた経験は太田のレスリング人生の糧となった。

大学は中学生の時に部の公式練習に参加して以来、憧れていた明大に進学。2年次は自分のプレースタイルに悩むも、左詰めを意識しながらの差しと相手が攻めたときのカウンターを武器に、3年次の関東大学1部リーグ戦では早大、神大相手にチーム内で唯一勝利を収めるなど健闘を見せた。

競技を始めて16年、胸には常に両親への感謝がある。「高校時代は特に減量時の食生活や送り迎え、メンタル面でのサポートなどすごく助けてもらった」。いつも会場に応援に駆け付けてくれる両親に勝利した姿を。両親の存在は彼がレスリングを続ける原動力となっている。迎えるラストイヤー、太田は階級を65キロ級から70キロ級に変更するという大きな決断を下した。「何よりもまずは体づくりから」。何事も妥協しない、ストイックな紫紺の戦士はどこまでも挑戦し続ける。
(おおた・たくみ 営3 いなべ総合 167cm・65㎏)