Go Forward

「場、建物、空間から公共性を考える」—地状学への誘い— 藤江 昌嗣 編著(学文社、税込2310円)



公共性に関する書物は多々あるが、本書は「地状学」の視点から展開されている点に特徴がある。編著者が提唱する地状学とは、地域の状態を記述する学問であり、「場」「建物」「空間」といった身近な存在を通して、足元の地域から思考と具体的な取り組みを展開していく営みであるという。各章のテーマは一見するとバラバラであるが、以上の視点が貫かれており、全体を通して読むと公共性にまつわる問題の広さと深さ、それに対応すべく奮闘している人々の活動とが立体的に浮かび上がってくる。防災体制や気象情報における自助・共助、特定地域における場や社会共通資本の醸成・共創、さらには、地域交通、アンテナショップ、公立病院、拠点施設、図書館などの具体的な場面に至るまで、多様な人々の協働による「公共性」がスケールを変えながら論じられていく。地域における思考と実践とをつなぐ書として、公共性に関心のある方はもちろんのこと、地域経済や公共経営に興味のある方にも、ぜひ手に取っていただきたい1冊である。
三上 真寛・経営学部教授(編著者も経営学部教授)