Go Forward

明大図書館の現在

図書館長 村上 一博

令和4(2022)年10月から改正施行された大学設置基準第38条は、「大学は、教育研究を促進するため、学部の種類、規模等に応じ、図書、学術雑誌、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法をいう)により提供される学術情報その他の教育研究上必要な資料を、図書館を中心に系統的に整備し、学生、教員及び事務職員等へ提供するものとする」(第1項)、「図書館は、教育研究上必要な資料の収集、整理を行うほか、その提供に当たって必要な情報の処理及び提供のシステムの整備その他の教育研究上の資料の利用を促進するために必要な環境の整備に努めるとともに、教育研究上必要な資料の提供に関し、他の大学の図書館等との協力に努めるものとする」(第2項)と定めた。大学が、図書館を中心に系統的に整備すべき資料として、電子ジャーナル等を念頭に「電磁的方法により提供される学術情報」が加えられ、図書館に閲覧室、整理室等を備えることを求める規定が削除された。従来の規定では、紙の図書のみが想定されていたのが見直されて、電子ジャーナル等を含めた教育研究上必要かつ多様な資料の整備促進等が盛り込まれたのである。

周知のように現在の明治大学図書館は、4つのキャンパスにそれぞれ図書館施設があり、コロナ禍で入館人数は一時期大きく落ち込んだが、2023年度はコロナ禍以前の状態に戻りつつある。2000年から開始した8大学での山手線沿線私立大学図書館コンソーシアムも23年目を迎え、他大学からの入館者数では、加盟大学中で本学図書館が最も利用されている(なお、具体的数値は、図書館のWebサイトに掲載している図書館年次報告書を参照されたい)。また、ネットワークからのデータベース・電子ジャーナル・電子ブック・リポジトリの利用者数も大きな伸びを示している。2023年からは、博物館・大学史資料センターと共同で、「明治大学デジタルアーカイブ」を立ち上げ、図書館所蔵の貴重書1066件の公開を開始した。

施設面では、生田キャンパスにおいて、自然環境との調和をコンセプトとした、新校舎と一体化した新図書館の建築がいよいよ始まった。

機能面では、数年来、価格が高騰する電子ジャーナルへの対応が大きな課題となっているが、これに対処するため、各学問分野の研究コミュニティーや大学図書館界において学術論文のオープンアクセス化を推進するさまざまな活動が行われている。本学の機関リポジトリも一層充実させていくことが必要であり、オープンアクセス化が進めば、所蔵機関に足を運ぶ必要なく、しかも無償で学術論文を利用できる。本学においても、一層のリポジトリ化を促進するとともに、さらに、論文をオープンアクセスで出版する際の費用APC (Article Processing Charge) についても、2024年1月から、電子ジャーナルの「Read & Publish契約」と各種支援制度によって、APCの免除や補助を受けることができるようになり、オープンアクセス出版に対する支援が拡大されることとなった。(法学部教授)