リーダーInterview

生命や社会の自己形成と
崩壊現象の要因を読み解く

山口 智彦

明治大学 研究・知財戦略機構・特任教授
先端数理科学インスティテュート副所長

各グループのリーダー役を務める先生にボク「めいじろう」がインタビューしました。
それぞれのテーマの意義や将来展望をじっくりお聞きしてきましたよ。

システムが突然破綻するしくみを考える

山口先生、はじめまして。先生たちのグループはどんな研究をされるのですか?

はじめまして。自己組織化によって築かれたシステムが、何らかの原因で破綻することがありますが、私たちがめざしているのはそういう現象を理解することなんです。

破綻ですか。具体的にはどんな現象なのでしょう?

例えばリーマンショックに代表されるような金融危機は、システムの破綻と言えるでしょう。また、人間の身体で言えば、正常な細胞が癌化することも破綻だし、自然渋滞や砂漠化といった現象もそうですね。

渋滞は、イヤですね。

高速道路の渋滞は、誰も望んでいないのに自然に発生してしまいます。また、先ほど挙げた例や自然災害、地球規模の気候変動なども、システムの破綻であり、どれも深刻な社会問題になっていますね。こうした現象を自己崩壊ととらえ、数理モデルを用いて理解し、それを問題解決やものづくりに役立てることがこのグループの目的です。

困った問題ばかりですね。

でもね、めいじろう、自己崩壊は、一概に困ったことと言い切れない面もあるんです。

自己崩壊も自己組織化の一種かもしれない

それはどうしてですか?

生命や物質が誰の手も借りずに秩序をつくる自己組織化は不思議で、魅力的な現象ですが、それと自己崩壊が本質的に別のものかどうかは、まだはっきりしていません。

でも、向きはまったく反対ですよね?

ある状態がなくなって、違う状態へ移行するという意味では似ているでしょう?自己崩壊は秩序をリセットするはたらきといってもよく、それは生命の起源や、生命が進化するときに、重要な役割を果たしてきた可能性も捨てきれないんです。

では、自己崩壊にも意味があると?

自己組織化と自己崩壊、どちらにも建設的な役割があるのではないか。私はそう期待しています。

どうすればそれが確かめられるのでしょう?

いままでMIMSが研究してきた自己組織化現象の理論的な成果をもとにしながら、化学・物理実験をベースにした研究との接点で精度を高めていきたいと考えています。社会の現象と数理モデルとの間の橋渡しを行い、単にきれいに理論化するだけではなく、実社会で使えるものにすることができたらいいですね。

金融危機が起きなくなったら、ぼくもうれしいです。

実験や観測技術の発展と、計算機技術の進歩によって、例えば金融市場の不安定性や複雑さのメカニズムのように、いままでは見えなかったものが見えてくる可能性はあります。自己崩壊のメカニズムを理解することと、それをコントロールすることの間には、まだ距離がありますが、解決の方法を考え、世の中に提案していきたいと思っています。

期待していいですか?

私たちの身のまわりの現象は、とても複雑で、数学的に記述することは容易ではありませんが、だからこそ挑戦する価値があります。自然科学、医療、社会科学など、さまざまな分野の研究者と協力して、破綻をコントロールすることをめざします。

山口先生、ありがとうございました。

めいじろうチェック!
  • システムが破綻するしくみを数理で理解します
  • 自己崩壊は、自己組織化の一種かもしれません
  • 自己崩壊を制御して、安定した社会をつくることに役立つ研究をめざしています

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