5つの研究

全体の事業概要

事業の概要

現在の急速な科学・技術の発展は、人間の活動を一気に拡大させ、資源の大量消費、製品の大量生産・廃棄が地球規模で生じ、資源の枯渇や地球温暖化問題といった環境問題を発生させています。このような状況下、地球環境変動の予測、自然災害の予知、疫病の病原・伝染経路の解明等、複雑性に起因する問題の解決は喫緊の課題です。これらの難問題の解決には、個々の既存分野によるアプローチだけでは十分ではなく、各分野の積極的な融合や新しい分野の振興が必要であり、中でも数学・数理科学と諸科学の融合が極めて重要です。明治大学ではこのような状況をいち早く認識し、上述の現象を数理モデリングで表現し、シミュレーションで再現し解明する現象数理学を、先端数理科学インスティテュート(MIMS)のもとで展開してきました。

本事業においてMIMSは、学長のリーダーシップの下、社会に現れる複雑現象に関連する緊急課題の解明に挑戦します。

事業の目的

2006年、文部科学省科学技術政策研究所から、「忘れられた科学―数学」というタイトルの報告書が発行されました。その報告書では、基礎科学としての数学の重要性を認識するべき旨の指摘とともに、応用分野や実学に取組む数学研究者の育成,数学研究者と他分野研究者とが連携する場の必要性等が提言されました。さらに2008年には、(独)科学技術振興機構研究開発戦略センターによって、21世紀の社会が抱えている難問題として、地球環境変動の予測、自然災害の予知、疫病の病原・伝染経路の解明等、既存の様々な分野を横断する複雑性に起因する問題が挙げられました。これらの提起された難問題の解決には、個々の既存分野によるアプローチだけでは十分ではなく、各分野の積極的な融合や新しい分野の振興が必要であることが確認されました。

明治大学は、この実情を把握し、社会への貢献を目指す数理科学の確立を推進すべく、2007年に大学の付置研究機関として、先端数理科学インスティテュート(Meiji Institute for Advanced Study of Mathematical Sciences(以下MIMS))を開設しました。MIMSは他大学、研究機関に先がけ、自然界や社会などに現れる様々な複雑現象を解明するために、Math Everywhereのキーワードのもとに、既存の数学の枠を越えた「現象を数学的に記述するモデル構築スペシャリスト」、「モデル解析と数学解析のスペシャリスト」の共同作業による現象数理学という新しい学際分野を提唱し、これまで研究活動を推進してきました。

初代MIMS所長(三村昌泰)は、現象数理学の実績により、純粋・応用数学のオリンピックである国際数学者会議・応用数学国際会議の両会議において招待講演を依頼されています。さらにMIMSは、応用数理では世界の頂点にあるフランスのグループから注目され、「生命・医学系に現れる複雑現象への現象数理学」をテーマにフランス国立科学研究センター(CNRS)日仏共同事業の日本側代表研究機関となっています。このような国内外での実績により、MIMSは2008年、グローバルCOEプログラム「現象数理学の形成と発展」を申請した結果、数学・数理科学分野において、京都大学・東京大学・九州大学とともに採択されました。さらに2014年、MIMSは数学・数理科学分野としては京都大学・九州大学についで3校目となる、文理融合研究を推進する共同利用・共同研究拠点として認定を受けたのです。

一方、現象数理学の全学的な取り組みという観点では、研究組織であるMIMSの活動実績の基盤の上に、現象と数学の架け橋であるモデル構築に関わる教育組織として、2009年に大学院先端数理科学研究科現象数理学専攻、2013年に総合数理学部現象数理学科が設置されるに至っています。このように本学は、「Math Everywhere − モデリングによる現象の解明」をキーワードとして掲げ、研究組織と教育組織が一体となって現象数理学を推進しています。MIMS発の現象数理学は、反応拡散系が支配する自己組織化の研究からスタートしましたが、その後文理融合を推進する横糸的学問として展開を遂げています。例えば2009年から、視覚モデルから錯視学グループが、2011年には、コンソーシアムを構築した金融経済数理モデルグループが、2012年から、折り紙幾何学モデルから折り紙工学グループが、2014年から感性モデルから快適介護空間学グループが加わるなど、モデルをキーワードとして多岐に渡る様々な学際的研究に波及しています。

以上の経緯から、5年間に本事業で推進する具体的な課題は、①生物、社会システムの形成と破綻現象のモデルからの解明②錯覚現象の解明と利用へのモデルからの接近③金融危機の解明に向けたモデルからの接近④産業イノベーションをもたらす折り紙工法の幾何学モデルからの貢献⑤機械学習に基づく感性モデルによる快適介護空間の構築―を展開することです。これまで数理からかけ離れていた学際分野に現れる現象の理解に焦点を当て、既存の分野固有の理論的枠組みに基づくモデルだけでは捉えきれない現象の解明に取り組む事業を、本学のブランドとして打ち出すことは適切であると考えられます。

これらの成果とともに、新たな融合プロジェクトの発掘と推進を通じて、わが国の数学・数理科学力をより一層高めること、その結果、世界の経済・社会の発展、科学技術の進展に貢献することが、本事業の最終的な目的です。

進捗状況

PAGE TOPへ戻る