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「グローバリゼーションと市民派経済学の可能性」研究プロジェクト

主要メンバー(2007年4月1日現在)

代表者:
畠山 大(明治大学商学部兼任講師)

共同研究者:
一ノ渡 忠之(明治大学軍縮平和研究所研究推進員)
曾根 榮一(平和構築・国際平和協力研究者)
桑江 友博(武蔵大学総合研究所研究員)

プロジェクトの趣旨および進行予定

軍縮・平和研究の主要な領域である——戦争や紛争、人権抑圧の問題は、貧困に代表される経済的な問題と不可分であり、貿易、資本や労働の移動、開発援助や軍事援助などの要素からなる国際経済関係は、歴史的にみて、国家間・民族間の戦争や紛争、貧困や人権抑圧の原因であり、また、結果でもあった。一方では、国家間における経済的な相互依存関係の発展が、政治的・軍事的な協調関係を担保することで、リージョナルな共同体やグローバルな「地球市民社会」が実現されるとみるような発想もある。いずれにしても、経済的な問題と(その認識・操作の学である)経済学における問題の所在と構図を、グローバリゼーションという今日的な視座に即して、析出・解明することは、今世紀の軍縮・平和研究における核心的なテーマとなってこよう。

以上の観点より、本プロジェクトは、若手研究者を中心として、この分野における萌芽的な研究を行うことを内容とし、将来的には、グローバリゼーション研究のための基盤や拠点を(明治大学軍縮平和研究所として)形成することを目的とするものである。

ところで、(現代的な意味における)「市民」は、平和の構築や貧困の撲滅、人権の尊重のために一定の役割を果たすような存在とされている。ところが、グローバリゼーションの前提であり、また、帰結でもある——情報・交通に関する技術やネットワークの飛躍的な発展は、本来的にナショナルなものであった「市民」の生産や生活のあり方をトランスナショナルなものとしていることで、「市民社会」や(「市民社会」の解剖学としての)「経済学」(political economy)の概念や実体が脱構築されることになった。具体的には、(1)〈生産-消費〉関係において、グローバルな構造とローカルな実存とが不可分なものとなり、(2)「国家」の相対化(本質的には、人間にとって、その生産・生活における「土地」が相対的なものとなること)は、(都留重人氏が指摘しているように)経済の内部性と外部性、交換価値(体制)の次元と素材の次元との矛盾に拍車をかけることになり、(3)近代の国民国家システムにおいて、これまでの「経済学」が担ってきた機能も相対化されることになろう。現在の「市民社会」にとって、よそよそしい存在となった「経済学」を揚棄することは、「市民」がそのポテンシャルを高めるために不可欠なプロセスであり、ゆえに、本プロジェクトにおいては、「市民派経済学の可能性」が追求されることになるのである。

本プロジェクトの主要メンバーは、経済学、社会学、開発学、国際援助を専門とする研究者と実務家からなる学際的な構成であり、今後、最終報告書の執筆に向けて、軍縮・平和研究の専門家の参加も検討されている。当面は、「経済のグローバル化とローカル・エコノミー」、「資源・エネルギーと環境」、「市民社会と企業」、「国際社会学の知識社会学」などの——各メンバーの研究テーマに沿って、公開・非公開の研究会を企画し、外部の研究者や実務家(企業人や運動家を含む)との交流に力点を置くことになるが、研究の進展に合わせて、グローバリゼーションの一般的な状況や理論に関する研究へとシフトしていくことになろう。また、研究の成果は、論文やレポートというメディア以外にも、「市民」によるアクセスが容易である——ウェブサイトの開設、講演会・シンポジウムの開催、ニュースレターやブックレットの発行によって、公開していく。そして、最終報告書については、学術論文としての水準は維持しながらも、「市民」の議論や活動の指針となるテキストとしての使用に耐えられるものを出版する予定である。

具体的な個々の研究テーマ(2007年2月21日現在)

  1. グローバリゼーションとローカル・エコノミーに関する理論的課題
  2. 上記の理論的枠組みにおける「価値」と「素材」の問題
  3. 国際財政論による地方財政把握の可能性——公共経済学批判
  4. グローバリゼーションにおける資源・環境問題の理論と現実
  5. エネルギー・資源利用の拡大と環境問題~私たちがすべきこととは?~
  6. 資源・環境問題から見るグローバリゼーションの課題
  7. グローバリゼーションによる富の集中に対する世界的な所得再配分政策のあり方
  8. グローバルなアクター(政府・市民・企業)のイニシアティブの発展と協力関係の構築——課題と展望
  9. 国際協力における日本企業のCSR(Corporate Social Responsibility)の可能性
  10. 国際社会学の知識社会学
  11. グローバルシティにおける国際移民
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