冷戦後の世界構造の転換の中で地域紛争のあり方も多様化している。冷戦期の紛争の特徴は複数の対立要因がイデオロギー対立に収斂し、東西陣営の代理戦争の形をとっていたのに対して、昨今の紛争はローカルな要因から直接的に引き起こされ、ローカルな対立に終始するかのように映ることである。故に、紛争は益々文化的対決の様相を帯びてゆき、所与の文化的コンテクストの理解なしには解決すら模索できないことになっている。一方、冷戦崩壊は一元的な「国際社会」の演出を可能にし、そこから正義を排他的に独占する国際機関が紛争の調停者として登場する傾向も生まれている。その代表例が国際刑事裁判所(ICC)設立の動きであろう。ICCの設立は、超越的な立場からの戦争犯罪の処罰を可能とし、それを以て紛争の抑止効果を期待できるものであるが、他方で、ローカルな文化的コンテクストを内包する多様な地域紛争を一元的な基準で裁断しうるのかという疑問も残している。 本プロジェクトは、歴史研究、紛争人類学等の手法によって様々な地域紛争の文化的コンテクストを分析しつつ、それらを中立的な基準によっていかに対処してゆくべきあるかを総合的に研究し、国際刑事法の整備と紛争後の和解のモデルを構築することを目標とする。