プロジェクトの趣旨および進行予定
本プロジェクトは、日本国憲法の基本原理の一つである平和主義について研究する。
日本国憲法は、先の日本によるアジア侵略の反省と将来再び侵略戦争を行わない誓約として、1946年に制定されたものである。憲法9条は1項で戦争を放棄し、2項で戦力の不保持を規定することで、軍事によらない平和を求めることになった。このような平和主義は、加盟国に制限付きながら個別的自衛権のみならず集団的自衛権の行使を認め、国連軍による集団安全保障体制をとる国連憲章の平和主義とは大きな違いがある。しかし、この違いは、対立的なものではない。日本国憲法の平和主義は、正戦論・無差別戦争観→侵略戦争の制限→侵略戦争の禁止→自衛戦争の制限という形で「戦争の違法化」を進めてきた国連憲章に体現される世界の流れをさらに発展させたものといえるからである。
今や世界では軍隊を放棄した国が約30カ国も存在し、兵器規制についても、生物兵器、化学兵器、地雷の禁止が国際法で規定されるまでにいたっている。日本国憲法の平和主義の理念は、決して世界で孤立しているわけではない。また、日本国憲法前文には貧困・飢餓・抑圧・差別などの構造的暴力の解消をも目指す積極的平和主義の規定もあり、「テロ」の温床となっている世界の貧困問題を解消する上でも、日本国憲法の平和主義は世界に向けて重要な指針を掲げているといえる。
このような歴史的にも比較法的にも先駆的な内容の憲法を有しながら、戦後の日本はこの理念を目指すのではなく、形骸化する歴史を歩んできた。1950年代からの「逆コース」の中で、独特の政府解釈により日本の再軍備が始まり、アメリカと日米安全保障条約を締結することになる。その後も政府の解釈改憲は進み、実態面でも「湾岸戦争」後は自衛隊が海外で活動を始め、「アフガン戦争」「イラク戦争」後はアメリカなど外国軍隊への兵站支援活動を行うにいたっている。この現実を憲法上も正当化し、さらなる軍事加担を進めるために、改憲論が盛んになってきたのである。
そこで本プロジェクトでは、憲法学を専攻し平和主義研究を行ってきた研究者と軍事ジャーナリストをメンバーとし、日本国憲法の平和主義の制定の背景、歴史的比較法的意義、理念と現状、将来展望などを研究する。今後は必要に応じて本プロジェクトにふさわしい共同研究者を拡充していく予定である。そして、毎月1回程度の定例研究会を開催し、研究メンバー(場合によってはゲスト)によるそれぞれの研究テーマに基づく研究成果を発表し、メンバー間での討議を行う。このような活動を通じて、研究成果を必要に応じて『季刊 軍縮地球市民』に掲載したり、シンポジウムの開催や、最終成果の出版により研究成果をまとめ、憲法の平和主義の発展に貢献したい。
日本国憲法は、先の日本によるアジア侵略の反省と将来再び侵略戦争を行わない誓約として、1946年に制定されたものである。憲法9条は1項で戦争を放棄し、2項で戦力の不保持を規定することで、軍事によらない平和を求めることになった。このような平和主義は、加盟国に制限付きながら個別的自衛権のみならず集団的自衛権の行使を認め、国連軍による集団安全保障体制をとる国連憲章の平和主義とは大きな違いがある。しかし、この違いは、対立的なものではない。日本国憲法の平和主義は、正戦論・無差別戦争観→侵略戦争の制限→侵略戦争の禁止→自衛戦争の制限という形で「戦争の違法化」を進めてきた国連憲章に体現される世界の流れをさらに発展させたものといえるからである。
今や世界では軍隊を放棄した国が約30カ国も存在し、兵器規制についても、生物兵器、化学兵器、地雷の禁止が国際法で規定されるまでにいたっている。日本国憲法の平和主義の理念は、決して世界で孤立しているわけではない。また、日本国憲法前文には貧困・飢餓・抑圧・差別などの構造的暴力の解消をも目指す積極的平和主義の規定もあり、「テロ」の温床となっている世界の貧困問題を解消する上でも、日本国憲法の平和主義は世界に向けて重要な指針を掲げているといえる。
このような歴史的にも比較法的にも先駆的な内容の憲法を有しながら、戦後の日本はこの理念を目指すのではなく、形骸化する歴史を歩んできた。1950年代からの「逆コース」の中で、独特の政府解釈により日本の再軍備が始まり、アメリカと日米安全保障条約を締結することになる。その後も政府の解釈改憲は進み、実態面でも「湾岸戦争」後は自衛隊が海外で活動を始め、「アフガン戦争」「イラク戦争」後はアメリカなど外国軍隊への兵站支援活動を行うにいたっている。この現実を憲法上も正当化し、さらなる軍事加担を進めるために、改憲論が盛んになってきたのである。
そこで本プロジェクトでは、憲法学を専攻し平和主義研究を行ってきた研究者と軍事ジャーナリストをメンバーとし、日本国憲法の平和主義の制定の背景、歴史的比較法的意義、理念と現状、将来展望などを研究する。今後は必要に応じて本プロジェクトにふさわしい共同研究者を拡充していく予定である。そして、毎月1回程度の定例研究会を開催し、研究メンバー(場合によってはゲスト)によるそれぞれの研究テーマに基づく研究成果を発表し、メンバー間での討議を行う。このような活動を通じて、研究成果を必要に応じて『季刊 軍縮地球市民』に掲載したり、シンポジウムの開催や、最終成果の出版により研究成果をまとめ、憲法の平和主義の発展に貢献したい。
主要メンバー
(研究統括責任者)
三輪 隆(埼玉大学教育学部教授)
(事務担当責任者)
清水雅彦(札幌学院大学法学部教授)
(共同研究者)
青山 豊(早稲田大学人間科学部非常勤講師)
麻生多聞(鳴門教育大学学校教育学部准教授)
浦田一郎(明治大学法科大学院教授)
岡田健一郎(一橋大学大学院法学研究科博士課程)
小澤隆一(東京慈恵会医科大学教授)
高橋利安(広島修道大学法学部教授)
内藤光博(専修大学法学部教授)
中村 明(元共同通信社編集委員)
永山茂樹(東海大学法科大学院准教授)
三宅裕一郎(三重短期大学法経科准教授)
城 秀孝(明治大学法科大学院補助講師、神田外語大学外国語学部非常勤講師)
プロジェクトメンバーである松尾高志様が2007年6月15日に亡くなられました。数少ない軍事ジャーナリストを失ってしまいました。松尾様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
三輪 隆(埼玉大学教育学部教授)
(事務担当責任者)
清水雅彦(札幌学院大学法学部教授)
(共同研究者)
青山 豊(早稲田大学人間科学部非常勤講師)
麻生多聞(鳴門教育大学学校教育学部准教授)
浦田一郎(明治大学法科大学院教授)
岡田健一郎(一橋大学大学院法学研究科博士課程)
小澤隆一(東京慈恵会医科大学教授)
高橋利安(広島修道大学法学部教授)
内藤光博(専修大学法学部教授)
中村 明(元共同通信社編集委員)
永山茂樹(東海大学法科大学院准教授)
三宅裕一郎(三重短期大学法経科准教授)
城 秀孝(明治大学法科大学院補助講師、神田外語大学外国語学部非常勤講師)
プロジェクトメンバーである松尾高志様が2007年6月15日に亡くなられました。数少ない軍事ジャーナリストを失ってしまいました。松尾様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
具体的な個々の研究テーマ(2008年11月1日現在)
- 戦後日本の平和の現実と憲法の平和主義
- 46憲法平和条項の国際政治的背景
- 基地問題と平和的生存権
- 戦後補償と平和憲法
- 憲法の平和主義と財政支出—政府開発援助(ODA)を中心に
- “護憲”政党の平和憲法政策(日米安保・自衛隊・9条政策)
- 憲法理念実現の市民の試み—「9条裁判」に焦点をあてて
- 政府の9条解釈
- 改憲論と非武装平和主義
- 安全保障と憲法9条
- 日米同盟—日米安保体制の変質・再編について
- 自衛隊の軍改革について
- 日本の軍事法制の展開と検討
- 安全保障政策の比較法的考察
- 軍事統制的観点からみたアメリカ戦争権限論議
- 現代軍事裁判所考—アメリカをモデルとして
- EUの共通安全保障政策
- 平和主義の歴史的考察
- デモクラティック・ピース理論におけるカントの位相
- 平和憲法の世界史的意義の研究