
学長に就任して早くも7ヶ月の歳月が過ぎました。この間,皆さんの暖かい励ましとご理解をいただき,概ね順調な滑り出しといえるスタートを切ることができました。
本学は,大学改革の一環として,本年度に情報コミュニケーション学部,専門職大学院である法務研究科(法科大学院)とグローバル・ビジネス研究科,独立研究科であるガバナンス研究科を開設し,そして,2005年度には専門職大学院である会計専門職研究科の開設を予定しています。
このように本学は,これまでも大学改革を推進してきましたが,今後も継続して積極的に改革を推進します。この9月には,私が推進する長中期教育・研究に関する計画書を策定し理事会に提出いたしました。その中では,新しい明治大学の創造に向けたグランドデザインと,その具体化へのロードマップも提示しています。
同計画書は,学長の大学改革に関する「基本方針」とその政策にかかわる「重要事項」から構成されています。「重要事項」は,次のとおりです。
いずれの項目についても,本学の大学改革に向けて今後推進すべき戦略的ビジョンを具体的に記しています。私の下で,「外部評価に耐えうる大学」を目指して,本学の教育・研究環境を早急に整え,必要な改革を行なっていく方針を打ち出しています。
ここでは,いくつかの項目について,その具体的な内容を紹介いたします。たとえば「国際交流の充実」においては,(1)本学を国際的大学として認知させるために留学生在籍者数を数年の内に倍増させること,そのための宿舎,奨学金,語学等の教育環境の整備をすること,(2)国際交流の戦略的デザインのもと,本学の海外協定校の数を今後とも増大していくため,新たな協定に取り組むこと,(3)卒業生ネットワークを含めた,本学の人的・組織的資産を有効に活用した,国際的インターシップを充実していくこと,を検討していきます。
「新学部,専門職大学院等の設置」においては,社会の質的転換期に必要な人材の育成は,社会的存在である高等教育機関として義務であり責任であるとの考えから,学生及び時代のニーズに合った教育サービスを提供するために新学部等の設置を検討していきます。カリキュラムを含めた学部教育の見直しと同時に,高度な職業人として社会の各分野で活躍する人材が育成できる,目的を定めた専門職大学院の設置も社会の要請であると考えています。時代が求めている高等教育を担うために新学部・専門職大学院等の検討は,大学改革の一環として継続的に推進します。
また,「生涯教育の充実」においては,1999年4月に設立したリバティ・アカデミーを,これまでの経緯や実績を踏まえ,単位の付与など,一層の学習環境を整え,より発展させていきたいと考えています。リバティ・アカデミーは,専門的職業人の意識・要望を的確に把握し,激変する現代社会で十分に活躍できる能力を育成する継続的な教育プログラムと,他方,高度職業社会の到来の中で,人間の存在や精神の在り方について体系的に学びたいという期待に応える教育プログラムを用意すべきとの認識から設立しました。本学の巨大な知的資産と大学院・図書館・博物館等の生涯教育部門をネットワーク化した,まさに『生涯学習型大学』です。2003年12月には,生涯教育棟としての『アカデミーコモン』が竣工され,この4月から使用が開始されています。その名のとおり「人々が出会い,交流し,知を発信する,舞台・広場」として大学が社会と関係を持ち貢献していくという役割を,この建物を中心に展開していきたいと思います。
ところで,私は9月18日から25日までの間,カナダに出張しました。前半はケベック州内の大学視察ミッションの一員として参加し,モントリオール大学やマギール大学での会議等を通して国際交流の可能性について交渉し,一定の成果をえてきました。後半は,第2回日加学長会議に参加しました(日本側は佐々木 毅 東京大学総長など12名,カナダ側はカナダ大学協会会長のクレア・モリス女史のほかヨーク大学長ローナ・R・マーズデン博士など12大学が参加しました)。会議では「高等教育の改革」を中心テーマに,日加の各サイドから6つのセッションに分けた課題について講演し,そのうえで討議を行う形式で実施しました。私は第4セッション「日本に関するカナダの学習/カナダに関する日本の学習」で講演しました。本学が1989年度から今日まで実施している「カナダ研究」の連続講座(このことについてカナダ側から大きな評価をえました)などを紹介するとともに「流動の激しい現代世界のなかで日加両国が世界の平和と地球環境の保全等といった全人類的課題に積極的に協力し合うことがさらに必要であろう」と指摘し,今後とも両国間の国際交流を強化・推進することの必要性を訴えました。2日間にわたる会議の集約として,日加の国際交流を拡充するため,参加大学は協力してその具体化につとめ,明年愛知万博開催の期間中に,第3回の日加学長会議が開催できるよう準備に入ることが確認されました。
なお,このカナダ出張中,私は多くの他大学長とも懇談いたしましたが,各大学とも今まで経験したことがないほどの大学改革に直面し,その対応に苦慮していること,それでも自らの大学の将来に夢を託して努力している姿を拝見しました。私自身も改めて明治大学の将来のため改革にむけて尽力したいと決意を新たにした次第です。