−持続可能な大学を目指して−

学長として,いよいよ3年目の年度を迎えることになりました。この間,学内外の皆様から暖かいご理解とご支援いただき,大学改革をすすめることが出来ました。この場を借りて,改めて心より御礼申し上げます。
今わが国は,質的転換期に入っており,その変化に対応できるか否かが,ある意味では個人のみならず組織や制度などの存亡にかかっているといっても過言でないといえましょう。大学も,このことの例外的な存在になりえないと思います。ある人は「大学はビッグ・バンに入っている」と評しています。
国公立大学の法人化がすすむとともに,株式会社など学校法人以外の組織体が大学経営に参入してきております。 これらの動きは,これまで高等教育を担ってきた「大学の使命」そのものを問うものといえます。換言すれば,それは,大学教育に対して社会が不信を表明していることの現れともいえます。確かに目先の専門的な技術習得(実務)に対して,これまでの大学教育では不十分なところがあったといえます。しかし,そのことだけで人が生きていくうえで必要な英知の涵養など人間教育(いわゆる教養教育)を看過あるいは軽視してよろしいのでしょうか。このような方向で高等教育を展開しようとする政策潮流もみられますが,この潮流には十分に警戒しなければならないと考えています。
私は,明治大学が私学の雄として持続可能な大学になるためには,都心型大学であること,および創立125年という伝統の中で形成されてきた「明治の強さ」に着眼して,明治らしい顔(特色)を今こそ他者にも観えるように具現化しなければならないと決意し,大学の改革に取り組んでいます。これまでの2年間で,教学の制度改革,教育や研究の環境整備,および社会連携(公開講座)の促進・拡充につとめてきました。これからの2年間では@新学部の開設,Aユビキタス・カレッジ構想の展開,B大学院を含む研究環境の改革,C各地区キャンパスのグランドデザインの構築とそれにともなう中長期計画の策定,さらにはD国際交流や社会連携の促進・拡充など,広範囲にわたる,しかも大学運営の根幹にかかわる諸課題に取り組んでいきます。今後とも,学長として高等教育機関としての本学の将来に禍根を残すことがないよう注意深く対応して諸改革を推進することをお誓いして,ご挨拶とさせていただきます。
学長 納谷廣美 |