「世界に開かれた大学を目指して」
この4月から,2期目の学長職をつとめることになりました。ご期待にそえるよう,重責をはたしていく所存ですので,これからの4年間,よろしくお願い申し上げます。
今,わが国においては教育問題がマスコミで盛んに取り上げられており,重要な政治的課題になっていることは,ご高承のとおりです。それは,戦後の日本経済が「奇跡的な復興と高度成長」を遂げるなかで,社会の諸制度・分野は厳しい痛みをともなった改革を実施してきましたが,これに反して,教育分野とくに大学は「旧態依然である」との厳しい指摘に基づくものです。確かに,戦後経済の右肩上がりの繁栄があって,大学の大衆化がすすむなか,大学は本格的な変革をしないまま,いわゆる「開発と拡充」の経営路線を押しすすめてきたといっても過言ではないと思います。このことのツケが現在,大学への前述した酷評になって顕在化しているといえます。
大学は,いずれの時代においても「社会的なニーズに適応した人材」を養成しなければなりません。しかし,その人材養成は近視眼的な見方ではなく,「未来の他者との連携」をも視野に入れたものでなければならないと,私は考えています。
わが国は近代化のプロセスのなかで,21世紀に入って間違いなく,明治維新や戦後改革に匹敵するほどの社会的変革を必要としています。現在,交通手段や通信手段の高速化,情報処理技術(IT)の高度化などにより,人や物,そして情報の動きは全地球規模で行われています。その交流は,国
nationと国 nationの関係という視点(これまで「国際関係 international」と称されてきた局面)から,文字どおり「地球は一つ」との視点へと転換しようとしている時代,すなわち「地球規模
globalization」の時代に入っていると思います。このような時代をむかえて,わが明治大学は,今後は「世界に開かれた大学 Open Minded
University」を目指すべきです。
これからの4年間,学長として,建学の精神「権利自由」「独立自治」および127年の歴史と伝統に基づいて,「他者との共生」のなかで「個の確立」を目指す人材の養成につとめていきたいと考えています。とくに世界で活躍できる強く輝く「個」を育てる教育研究の環境整備を目指して,大学の改革にあたります。
学長 納谷廣美
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