6月4日よりスタートしている「同人誌の小宇宙 ─米沢コレクションを中心に─」展の関連トークイベントとして開催された。
3月26日(金)より米沢嘉博氏旧蔵同人誌の公開がスタートしました。その一部を紹介しながら、「同人誌とは何か」を語っていただきました。
まんが同人誌の意義とは、というと大げさですが、文化・産業の側面から見ていきます。まず「自己表現の場である」というのがあります。こんなに同人誌というかたちで自己表現をしている国はない。女性がこんなにものを書く/描くのは世界的にはめずらしい。コミックマーケットの参加者も女性が多い。
参考リンク「コミックマーケットとは何か?」 http://www.comiket.co.jp/info-a/WhatIs.html
商業ベースの裾野の広さを同人誌が支えている。たとえば、経済産業省の2004年の調査にプロ漫画家の半数に同人誌経験があるという結果が出ている。今では同人誌経験のある漫画家はめずらしくない。ゲーム、アニメといった分野にも同人誌経験者は多く参入している。
同人誌はおたくビジネスの中核のひとつ。「同人誌の市場規模は?」ってよく聞かれるのだけど、回答できない。C76で1200万冊同人誌を持ち込み、950万冊売っていることがわかっている。1冊平均400円だとしても37億8千万円くらいのお金が直接的に動いた計算になる。会場代、印刷代、飲食、宿泊、交通等々を考えるとどうなるか。この計算は1回のコミックマーケットだけの話で、日本では年間1500〜1600のイベントが開かれている。相当な規模になることは確か。
同人誌をつくっている人が皆プロをめざしてている訳ではない。漫画家は大変という情報も入ってくる時代なので、あえて好きなことだけという人も。基本的には自己実現。7〜8割のサークルは赤字。黒字が出るところでも打ち上げ費用程度のところがほとんど。この気楽さが支えている。
同人誌にはコミュニティは大事。即売会もそのひとつ。ネットを媒介とするSNS、掲示板、ともだちのコミュニティがある。ネットが普及すると同人誌はどうなってしまうの?と聞かれることもあるが、対立構造ではなく、それなりに共存しているもの。ネットで絵を描ければ満足〜という人や即売会に1回出れば満足という人もいるので温度差は当然ある。コミュニティ内のTPOやコミュニティごとに自分の役割、手段を変えていく。コミュニティによって元気だったりそうでなかったり。コミュニティ内で生きていくための順応。
あるものが好きな私と別なものが好きな私はそのままイコールではない。それが表現の多様性につながっていくのかなと思います。
商業誌でできないことができる。パロディ、番外編、奇抜な装丁、商業単行本化されない作品の出版など。プロは原稿を描くだけだが、同人誌だと本づくりのすべてに関わることができる。読者とのふれあい、友人・知人と会う。読者の最新の嗜好がわかる。
今回公開された3000冊以外にも米沢嘉博旧蔵の同人誌は150箱くらいある。岩田次夫さんの本の公開も期待したい。
トークは書画カメラを使って進められ、約50冊の同人誌が紹介された。
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