まだ、米沢と知り合う少し前、当時付き合いがあったマンガのコレクターの方々と「古いマンガの資料館があればいいのにね、みんなの本を持ち寄ればできるかも」などとお酒の席か何かで話したことを、この挨拶を書くにあたり思い出しました。後に米沢ともそんな話になったときに、彼は「それは無理だね、みんなコレクターだから」と笑って言っておりました。1970年代中頃の古本の世界はマンガバブルな時代で、「誰々のB6版がいくらで出ていた」とか、「何々の雑誌がまとめていくらで売られている」といった話も飛び交っていたように思います。一方で「いい年してまだマンガ読んでる」と叱られる時代でもあり、そんなマンガに驚くほど高い値段がつくぐらい評価されている! と、私にとってそれは、驚きとともにちょっと嬉しいことでもあったのです。ところが、それに対して、米沢は「ぼくはコレクターじゃないから」と一言。そう、彼にとってはマンガも他の読み物のひとつだったのです。SF、映画、ロック、ポップス、演劇、絵画などなど、何でもございです。それでも、やはりマンガが一番彼の中で親しんだものだと思います。
今回この米沢嘉博記念図書館に協力するにあたり、まず彼が一番親しんだマンガ達を皆さんにできる限りお見せしたいと思います。その後、彼の他の本達も徐々にお見せできればと思っています。いったいどんなものが出てくるのか?実は私にもその全貌はわかりません。図書館の運営を通じて、私にもよくわからない米沢嘉博が少しずつ現れてくると思います。それは、今後のお楽しみということで……。「ぼくはコレクターじゃない」と言っていたおにいさん(生前、私は米沢をこう呼んでおりました)、いいですよね?
最後になりましたが、本図書館の実現に協力して下さいました全ての方々にお礼を申し上げます。ありがとうございました。
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