PHOTOGRAPHY__SHUHEI TONAMI/LOCATION__HIROSHIMA
学びの先に広がる世界

遠く離れた
銀河の神秘に
迫りたい。

広島大学
宇宙科学センター 助教稲見華恵物理学科

2007年に明治大学を卒業し広島大学で助教をしている稲見さんに、大学時代のこと、仕事のことをお聞きしました。

満天の星が導いた私のキャリア

幼い頃、石垣島で見上げた満天の星。それがきっかけで、私は宇宙に関わる仕事に就きたいと思うようになりました。具体的には、宇宙飛行士、ロケットや人工衛星の開発などです。宇宙に関する図鑑を読み、調べれば調べるほど、新たな疑問がうまれていきました。

宇宙を理解するのに必要な物理をしっかり学ぶため明治大学理工学部の物理学科に入学。在学中、インペリアル・カレッジに滞在していた物理学科の先生を頼り、現地で物理学の研究者を訪問することがありました。そこでの対話が私にとって大きな刺激となり、世界で活躍する研究者たちと宇宙の謎を解明していきたいと強く思うようになりました。

その後、総合研究大学院大学で念願の宇宙科学を専攻し博士号を取得。アメリカやフランスで観測天文学の研究に携わり、2019年に広島大学宇宙科学センターの助教に就きました。

宇宙の謎が、研究の原動力。

私のいまの研究領域は、太陽系が属している天の川銀河以外の系外銀河と呼ばれるさまざまな銀河を調べること。その中でも赤外線で明るく輝く銀河の謎に迫るために、赤外線宇宙望遠鏡を使っています。赤外線の望遠鏡は、可視光線では届かない遠方の銀河をとらえることができ、可視光線では見えない新たな銀河を観測することができます。

研究では、人類が見たことのない宇宙の極初期である131億年前の塵に埋もれた銀河や地球に比較的近い5億光年離れた銀河を詳細に調べたり、またその銀河が進化する過程にあるエネルギー源を突き止めたりすることができました。どうやって宇宙ははじまったのか。どうやって地球は生まれたのか。まだまだわからないことばかりですが、その疑問が私の研究の原動力となっています。

叡智のひと粒を次世代につなげたい

「ペイル・ブルー・ドット(淡く青い点)」という私の好きな写真があります。これは、1990年にNASAの無人探査機ボイジャー1号によって、地球から約60億km離れた場所から撮影された地球の写真です。私たち全人類が住んでいる地球も、この写真の中では0.12ピクセルの小さな点でしかありません。

私の研究も、歴史からみたら小さな点でしかないと思っています。いまある科学は、ニュートンやエジソンをはじめとした、数えきれないほどの学者たちが少しずつ砂の粒を集めるように叡智を積み重ねてきたもの。私もそのひと粒になれたらいいなと思いながら、次世代につなげられるよう研究を続けています。そして、いつまでも私を魅了する宇宙に、いつの日か行ってみたいと思っています。

稲見華恵

物理学科/2007年卒業

2007年3月物理学科卒業。その後、総合研究大学院大学にて宇宙科学を専攻し、博士号を取得。同学在学中より米国カリフォルニア工科大学の研究チームへの参加をはじめ、米国国立光学天文台やフランス国立科学研究センターで研究職に従事し、グローバルに活躍。2019年には現職である広島大学の宇宙科学センターに助教として着任し、教育研究活動を行っている。

※所属・役職は取材時点のものです。