PHOTOGRAPHY__SHUHEI TONAMI/LOCATION__IKUTA CAMPUS
学びの先に広がる世界

大好きな研究で、
世界の課題を
解決したい。

国立研究開発法人
日本原子力研究開発機構
物質科学研究センター
研究副主幹関根由莉奈応用化学科

2009年に明治大学大学院を修了し研究センターに就職した関根さんに、大学時代のこと、仕事のことをお聞きしました。

大好きなハイドロゲルを研究したい

幼いときに訪れた上野の博物館で、さまざまな鉱物の結晶が織りなす幾何学的な模様の美しさに心を奪われました。それがきっかけで不思議な形や感触がある物質が好きになり、中でもスライムやハイドロゲルといったゲル状の物質に夢中でした。ハイドロゲルは90%以上の水を含んでいるのに、個体としてつかむことができる不思議な物質。これはどんな構造なのか、ただただ気になっていました。

明治大学でその研究に取り組んでいたのが、応用物理化学研究室の深澤先生。先生は研究のイロハから、英語論文の書き方まで指導してくれました。特に研究テーマの検討にあたっては、私がなにをしたいのかということを起点に一緒に考え、研究を進めさせてくれたことが印象に残っています。いまでも研究の良きパートナーとして先生と関わらせていただいており、ありがたいです。

知識を深め、拡げ、新たな分野を創っていく。

大学院、そして日本原子力開発機構の物質科学研究センターと、もう15年近く研究を続けています。その中で、私にとっての研究は“知らないことを調べること”から“新たな分野を創ること”へと変化していきました。

その転機となったのは、サバティカルで過ごしたアメリカのノースウェスタン大学での学びです。そこでは、いままでの私の研究の延長線にはない、マイクロ流路をテーマにした研究に挑戦しました。世界中から集まった学生、研究員たちとの交流をはじめ、異なる分野の研究を進めることで、新しく豊かな見識を獲得できたと思っています。

研究によって知識を深めるだけでなく、新たな研究分野に触れ、知識を拡張していく。その両面のアプローチによって、新たな分野を創っていくことができると私は信じています。

ラーメンと研究がつながった

私はラーメンが大好きなのですが、実はそのラーメンも研究につながっています。その研究とは、骨や歯の主成分として知られるアパタイトが放射能物質を大量に吸着するというもの。当初は人工的に合成したアパタイトを使って実験していたのですが、コスト的にも非常に高く、実用性にも課題がありました。そこで、近所の馴染みラーメン屋さんから廃棄する豚骨のガラをもらって実験をはじめました。その中で、ラーメン屋さんが豚骨の処理に年間50〜100万円もかけているという新たな発見もありました。いまでは飲食店で廃棄される骨由来のアパタイトを汚染水に含まれる有害物質の処理などに活用し、循環型の環境浄化システムを創ることができるのではと考えています。

これからも広い視野を持ち、日本、世界が抱える課題の解決に貢献できるような研究をし続けていきたいです。

関根由莉奈

応用化学科/2007年卒業
大学院理工学研究科 応用化学専攻 博士前期課程/2009年修了

2009年3月大学院理工学研究科 応用化学専攻 博士前期課程修了。応用物理化学研究室にて、不溶な三次元構造をもつ高分子物質であるハイドロゲルについて研究。その後、東京医科歯科大にて博士号を取得し、2012年より国立研究開発法人日本原子力研究開発機構の物質科学研究センターにて研究業務に従事。

※所属・役職は取材時点のものです。