PHOTOGRAPHY__SHUHEI TONAMI/LOCATION__SAITAMA
学びの先に広がる世界

脳波の声が
聞こえる世界を
実現したい。

日本光電工業株式会社
技術開発本部 医療機器技術開発部
脳神経機器部兵藤道大電気電子生命学科生命理工学専攻

2019年に明治大学大学院を修了し医療機器メーカーに就職した兵藤さんに、大学時代のこと、仕事のことをお聞きしました。

興味と研究と仕事が一致した

入院したときに目にした、格好いい医療機器。それに魅了されて、私は明治大学の電気電子生命学科へ入学し、電気と生命の基礎を学びました。また、その学びを問題解決に活かせる力を身につけたいとの思いから、大学院へも進学しました。

私の研究テーマは、脳卒中により損傷を受けた脳の中の神経回路の解析。モデル動物の脳活動を計測し、神経損傷後の機能回復の背景にある脳の変化を考察する研究でした。取り組む中で、研究を通して培った経験を人の役に立てられたらと思い、脳神経系の医療機器もつくっている日本光電工業に就職しました。

幼い頃からの興味、そして大学院での研究が仕事と一致していたこともあり、入社後は学生時代に積み上げてきたものを存分に活かすことができています。大学院での研究と会社での仕事の大きな違いは、待ってくれている患者さんに届くまでの距離感。その近さをやりがいに、日々業務に励んでいます。

医療従事者の誰もが、脳波を読み解けるように。

脳波は未解明のことが多く、発展途上の分野です。そのため、脳波を測ることができても、その脳波を読み解ける人はまだまだ少ない状況です。

私がつくっている脳波の解析ソフトの目標は、医療従事者の誰もが脳波を活用できるようにすること。解析ソフトは、脳波の計測結果に応じて適切な解析結果をソフトウェア側で提示することで、医療従事者の読み解きをサポートします。その解析技術をアップデートし続けていくことで、総合病院から小さな病院まで、より多くの医療従事者の役に立てればと考えています。そのために、上司や同僚、医療従事者とディスカッションをしたり、先端の研究論文の読み込みをしています。常に最新の知見をインプットし続けることは大変ですが、考え続けられるこの環境がこの仕事の面白みです。

脳波を用いて声なき声をとらえる

脳波は、患者さんからの一つの声と私は考えています。救急医療や集中治療の現場では意識がない患者さんが多く、SOSの声を救い上げられないことがあります。脳波を用いてこの声なき声をとらえることができれば、より多くの患者さんを、適切な治療につなげるためのサポートができると考えています。脳波の解析ソフトを通して、その大きな課題に挑戦していますが、思うような結果が出ないことがほとんどです。ただそこで立ち止まらずに、目の前の課題と向き合い続け、いまできることは何かを自らに問い、思考を止めないことが大事だと思っています。

これからも脳波の解析ソフトを改善し続け、患者さんの声なき声をとらえられる世界を実現し、少しでも多くの患者さんの役に立てればと思っています。

兵藤道大

電気電子生命学科/2017年卒業
大学院理工学研究科 電気工学専攻 博士前期課程/2019年修了
※電気電子生命学科は2015年度より電気電子工学専攻および生命理工学専攻の2専攻に改組

2019年3月大学院理工学研究科 電気工学専攻 博士前期課程修了。脳回路機能研究室にて脳卒中後疼痛における神経回路を研究。その後、日本光電工業株式会社にて脳神経機器の部員として主に脳波計の解析ソフトの開発業務に従事。

※所属・役職は取材時点のものです。