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鳥取の工芸文化 手仕事の近世、近代、そして現代
2017年度明治大学博物館特別展
鳥取の工芸文化 手仕事の近世、近代、そして現代 |
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(1)実施形態
(2)趣旨 明治大学博物館商品部門が収集・展示のテーマとする「伝統的工芸品」について,その形成過程を大学の創立者岸本辰雄の出身地鳥取県を事例に調査・研究した成果を,地域連携事業の一環に位置付け発表した。 今日,伝統工芸とされているものは,元来,その地域の基幹産業を担った業種もあり,機械工業製品が普及する以前には日常の実用品として供給されていたものである。手作業と天然原料による非効率的な産業は,近代化の過程で縮小を余儀なくされた一方,機械で量産される廉価製品に対し,「伝統」「手作り」といった新たな価値付けがおこなわれた。通商産業省による「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」(略称:伝産法)が制定された1974 年頃までには,一般的な工業製品とは異なる商品群として「伝統的工芸品」の概念が成立し,今日では地域のブランドイメージ構築に際しあらためて注目されつつある。 この展覧会では,鳥取藩政時代の物産が“近代”という変化の時代を経て,工芸品として復興され,現代に継承されてきた状況に着目し,「文化」を規定する上で大きな要素となる「伝統」とはいかなるものと考えるべきか,時代背景・社会情勢との相互作用によって形成されてきたその実態を提示することを目標とした。 (3)展示構成 (1) 藩政時代の“御国産” 江戸期 鳥取藩(池田家)は江戸初期から自領の和紙産地から用紙を買い上げており,藩領西部を主産地とする木綿と鉄は有力産地として全国的に知られた。必需品を領内で自給するとともに他領に対する産物輸出によって財政を強化する方針を採用し国産品生産を振興した。ここでは,領内から買い上げた和紙で作成されている専売制・産業振興に関わる藩政史料,陶器は久能寺焼,鉄製品は稲扱千歯,因幡錠といった実物を交えて紹介した。 (2) 近代化 手工業の衰退 幕末~大正期 明治新政府は工業の近代化を推進し,やがて製紙・製鉄は大資本による近代機械工業が台頭し,綿織物産業も備後絣をはじめ大規模産地が形成される。手漉きや砂鉄製錬法,糸車による手引きの製糸といった従来型の手作業はそれらに抗すべくもなかった。明治期に全盛を迎えつつも大正期に衰退する浜絣の古布と糸車,和紙関係では漉桁,陶器は民藝運動によって再評価・アレンジされる以前の牛ノ戸焼大酢徳利・鉄絵芦雁文大皿を展示した。 (3) 工芸のルネッサンス 昭和戦前・戦後期 昭和に入り,民藝運動の同人であった鳥取出身の医師吉田璋也が帰郷して開業すると,地元の工芸の技術継承と時代の変化に応じた商品開発を指導した。牛ノ戸焼の緑釉黒釉染分皿,伸縮式中折傘木製電気スタンド,ににぐりネクタイなど初期の開発品を紹介。浜絣は銀座たくみ工藝店に勤務した嶋田太平とその家族の尽力によって復興され,後に国指定伝統的工芸品弓浜絣となる。その復興過程の古布を展示。因州和紙も,洋紙に押されつつも書道用紙,工芸紙と商品の転換によって存続が図られてきたことを各年代の和紙見本帳で紹介した。やがて民芸品は戦後の高度経済成長期においてブームと呼ばれる時代も到来するが,その時,明治大学商品陳列館が収集した陶磁器・郷土玩具を展示。 (4) 鳥取発 手工芸の現在 現代 鳥取県では農水産品の生産・販売と観光振興に並行して文化的イメージの対外発信に注力している。伝統的工芸品産業は規模としては零細であり基幹産業になり得る存在ではないが,豊かな創造性のアイコンとして鳥取県の地域ブランドを向上させるイメージ戦略を担い,県の文化・産業・観光振興への寄与が期待されている。ここでは,前出の工芸品について現代の製品(因久山焼,牛ノ戸焼,因州中井窯製品,上神焼,弓浜絣,倉吉絣,因州和紙)を展示。また,工芸品を掲載した観光案内のパンフレット類を紹介した。 (4)展示資料の概要 出展総数 98 点(出展品46 点・館蔵品52 点) ※パンフレット類を除く 出展機関 鳥取県立博物館 鳥取市あおや和紙工房(寄託品) 鳥取民藝美術館 (5)関連イベント
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